
日本中央バスの車内。このように自転車2台をしっかり固定でき、補助席1席ずつが使えなくなるだけで他の乗客への影響も少ない(日本中央バス提供)【拡大】
▽レジャー客に使ってもらえば自転車人口も拡大?
そこでだが、せっかく自転車が輪行袋不要で載せられるのだから、地元の人だけでなくレジャー客にどんどん使ってもらうという手はないのだろうか?
なにせ、赤城山のヒルクライムに重なる経路だ。標高1400メートルほどの峠から北に下って沼田に至る長大な山越えコースも設定可能で、その登りの中途まででバスをリフト代わりに使えることになる。それについても尋ねてみたが、「ロードバイクなどの愛好家の方は、ヒルクライムそのものを楽しもうとする志向が強く、こちらのバスを利用する例はほとんど見られない状況です」(同氏)とのことだった。
要するに、本格的なロードバイク乗りには中途半端なショートカットと映り、かといって初心者やファミリー層を取り込むまでには至っていないということだ。
初心者の取り込みという観点で、関東一円の事例のなかでも魅力的なのが、静岡県の「天城線サイクルラックバス」だ。こちらは伊豆半島中央部を縦断する経路で、途中の天城峠は標高710メートル。これでも初心者にはギブアップ必至のきつさだが、峠までバスで行けるなら、サイクリングの楽しい部分だけを切り取って味わえる。まさしくリフト感覚でバスを使えるのだ。そういった経験を入り口に自転車人口がじわじわと広がっていく可能性はある。
そうは言っても、自転車をバスに載せることの実態は、やはり、グーグルやアップルの通勤シャトルバスのような気軽なイメージではいかないようだ。日本中央バスのように車内積み込み方式にすると乗降の際に手間がかかり、慣れていないとつい尻込みしてしまうこともあるだろうし、バス前面のラックに載せる方式の場合には、せいぜい2台しか載せられないという台数の制約がつきまとう。
だが、それでも、自転車→バス→自転車という移動形態が幅広く利用可能になれば、一家に3台目のクルマからスポーツサイクルへの乗り換えなども含めて、ライフスタイルや消費動向にも大きな変化が生じることも期待できる。そして日本は国土が山がちであることから、神戸市と長崎市を筆頭に、坂道の多い街があちこちにある。現状ではまだまだ課題が多くても、この交通システムの将来における可能性に期待したい。(待兼音二郎/5時から作家塾(R))
《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。