【IT風土記】島根発 最先端ICT教育が離島の課題を解決 隠岐島前高校魅力化プロジェクト (1/3ページ)

 島根県の隠岐諸島にある海士町(あまちょう)が取り組む教育による町おこしが注目を集めている。島にある県立隠岐島前(おきどうぜん)高校の生徒たちの学習支援のため公立の学習塾を設け、最新のテレビ会議システムを活用して「遠隔授業」を行うなど独自教育プログラムを展開し、町の活性化の大きな原動力になっている。

 600キロ離れた高校との討論

 海士町は隠岐諸島の西側にある島前三島の一つ、中ノ島にある小さな町だ。島の玄関口である菱浦港近くに島前の3町村が運営する公立の学習塾、隠岐國学習センターがある。築100年の古民家をリニューアルした木造の建物はどことなく昔の寺子屋を彷彿とさせる雰囲気だが、ここで最新のICT(情報通信技術)を使った授業が行われている。

海士町の玄関口、菱浦港

海士町の玄関口、菱浦港

 「今回のテーマはODA(政府開発援助)です。インドネシアとアフリカのルワンダ、どっちの国を優先させるべきだと思いますか。その理由も考えください」

 隠岐國学習センターが宮崎県えびの市の県立飯野高校と7月に行った「遠隔授業」だ。センターにいる隠岐島前高校の生徒たちの前には、壁2面にL字型に備え付けられているスクリーン。画面の向こうには飯野高校の生徒たちの姿がみえる。講師が投げかけたテーマで双方の生徒たちが意見を述べ合った。

 授業に利用されているテレビ会議システムは、2つのカメラで教室の左右2面を撮影したものをL字スクリーンに映し出す。プロジェクションマッピングの技術を応用して、スクリーンに映し出された映像は立体感がある。海士町と飯野高校は600キロも離れた距離にあるのだが、まるで同じ教室の中で授業をしているように見える。

L字スクリーンを使った宮崎県立飯野高校の生徒たちとの遠隔授業のようす(隠岐國学習センター提供)

L字スクリーンを使った宮崎県立飯野高校の生徒たちとの遠隔授業のようす(隠岐國学習センター提供)

 参加した隠岐島前高校2年の加藤千翔(ちか)さんは「飯野高校の生徒たちは説得力のある内容で、すごい刺激になりました。自分にない考えを知るきっかけにもなりました」と語る。

遠隔授業に参加した加藤千翔さん(左)と青山みずほさん。飯野高校の生徒たちとの授業に大きな刺激を受けている

遠隔授業に参加した加藤千翔さん(左)と青山みずほさん。飯野高校の生徒たちとの授業に大きな刺激を受けている

離島の高校の魅力を高める