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「マイパブリック」に包まれる安心感 グランドレベルで何気ないリアルな交流を (2/3ページ)

安西洋之

 街ゆく見知らぬ人を喜ばせる活動をしてきた田中さんの言葉に編集者は心動かされ、その言わんとする重みをそのまま受け止めたのだろう。

 この本で主張することは一つしかない。

 日本の都市計画はグランドレベル(地上レベル)に賑わいを生むことをほぼ考えていない。「どうにかしろ!行政から不動産会社まで顔を洗って出直せ」と(そんな乱暴な表現を田中さんは使っていませんが)。

 外面のいいキャッチフレーズでコミュニティーつくりに気配りしている風を装うが、「どうせ自分が立つ場所で、世界を広げてみた経験なんてないだろう? どうしてそういう人間が、コミュニティーを語れるのだ」と繰り返し言いたくてたまらない田中さんの姿が見える。

 肩肘はった「場のコミュニケーションを促進する」なんて謳い文句は、行政や大企業の予算獲得の表看板に過ぎない虚しさを感じ続けてきたのだろう。

 だから彼女は、一昨年、グランドレベルという壮大な名の会社を作った。そんな大きなサイズのことはできないが、確実に実のある世界をみんなに見せてやろう、という意気込み溢れる会社である。

 その1つの試みが昨年12月、都内・両国にオープンした喫茶ランドリーだ。住宅地の一角にあるビル一階に、その店はある。カフェなんて気取らない喫茶店であるが、ホッとする空間が通りを歩いていると目に飛び込んでくる。

 「ああ、オシャレですね!と言われると、ダメ。それではまだふつうの人に距離感をもたれてしまう」と田中さんは語る。

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