堺の私設刃物資料館が外国人に人気 英文解説文も

展示品について説明する信田圭造社長=堺市堺区
展示品について説明する信田圭造社長=堺市堺区【拡大】

 「堺刀司(とうじ)」のブランドで知られる1805年創業の老舗刃物製造販売会社「和泉利器製作所」(堺市堺区)の信田(しのだ)圭造社長(80)が趣味で開いている私設刃物資料館が外国人観光客らに人気だ。展示品の豊富さに加え、自ら案内し、英文での解説文も添えるなど丁寧な対応が評判を呼び、月に約50人が訪れるという。

 資料館は昭和45年、同区桜之町に開設し、約5年前に本社(同区九間町)の隣へ移設。7代目の信田社長と先代が収集した約600点を所蔵し、常時約300点を展示している。所蔵品は、たばこ包丁や石包丁など貴重な包丁をはじめ、刀や珍しい刃物の数々、火縄銃、製作用の道具、昔の資料など多岐にわたる。

 信田社長は「失われていく貴重な昔の品々を何とか残したいという思いで集めてきた。おかげでへそくりがなくなってしまった」と苦笑いする。

 多種多様な刃物を展示するだけでなく、はがねから包丁の完成品ができるまでの過程を各工程の素材を順番に並べてわかりやすく解説したり、刃物づくりのようすを人形で再現したりと展示の仕方も工夫。火縄銃はショーケースに入れずにむきだしで展示し、自由に手にとることができる。

 信田社長は蓋のような銃の部品を指さし、「これは『火蓋』といって、火縄の火が間違って火皿に引火しないための安全装置。戦いが始まることを『火蓋を切る』というのは、これに由来している」。来場者は信田社長のこんな解説も聞くことができる。

 資料館は予約制だが、それでも月に約100人の希望者があり、うち半分ほどが外国人観光客。「ほとんどが欧米系で、通訳を介して1時間以上も熱心に聞いてくれる」という。