
R65不動産・山本遼さん【拡大】
■情報を集め、足を運んで確認
いまは元気に1人暮らしができていても、健康的な理由などで暮らしが維持できなくなることは当然予想される。そういう厳しい将来像から目をそらすことなく向き合うこともときには重要だ。人生最後のステージまで含め、快適に暮らせる住まいをシミュレーションしてみよう。
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いま暮らしている住まいを見回してほしい。もし足腰が弱ったら、戸建ての場合、2階へ洗濯物を持っていくのは難しくなるだろう。マンションやアパートでも、深い浴槽に入るのはつらくなるかもしれない。あるいは持病を抱えている人は、毎日のように通う病院が遠くては苦労することは明らかだ。
ライフエンドに向かって「住み替え」を行うのは珍しいことではなくなっている。2015年の国勢調査によると、5年間で転居した人の年齢別割合は75歳を超えると右肩上がりとなっているのが分かる。85歳以上になると5人に1人は引っ越しをしている。
いざ引っ越しを検討するとき、同居人の都合を考える必要がないのはおひとりさまの強みといえるかもしれない。高齢者向け住宅が近年急ピッチで増え続けているという追い風もある。その一方で、一般賃貸は高齢のおひとりさまの入居を拒むケースもある。とにかく情報を仕入れて、可能な限り足を運んで多くの物件を知ることが重要になるだろう。
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■一般住宅探しは60代で
「子供たちが暮らす街に引っ越したい」「病院の近くに移りたい」。高齢者も一般住宅で住み替えたいという希望がある。ところが入居希望者が高齢者となると、部屋が空いていても貸してくれない。高齢者向け不動産仲介業の山本遼さんに、なぜ高齢者の住み替えが難しいかを語ってもらった。
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「R65」に相談に来られる方は、お住まいを探しているご本人が7、8割です。身体的にも金銭的、親族のサポート的にも何ら問題のない人たちが相談に来られます。裏を返せば、そういう人たちでも普通に賃貸を探すとうまくいかないケースが多いということでしょう。実際、街の不動産会社に相談しにいったら「そんな年齢で無理に決まっているじゃないですか!」と言われたという方もいました。
部屋を貸す側が高齢者の入居を拒むケースが多い理由は、さまざまなリスクを嫌う気持ちにあると思います。孤独死の心配があるだけでなく、身寄りのない人は、何かあったときに誰が対応するのかといった問題もありますから。ただ、個別に見れば問題ないのに、最初から「一定の年齢以上は受け付けない」という線引きをしている例が少なからず存在します。
一般論として、75歳を超えると、障害や持病の審査が必要とされる場合があるので、書面の審査だけで落とされることが多くなります。80歳や90歳になると、理解のある大家さんの物件でもかなり厳しい。できることなら65歳から74歳までの前期高齢期、もしくは60歳前後に家を探して移っておくことが理想です。元気に体が動くうちであれば、新天地でも新たなコミュニティーに参加しやすいですし、新しい生活にも早く慣れて、何かと有利に働くと思います。
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空き家や空き部屋の活用を促し、高齢単身者や低所得者の入居を拒まなければ、リノベーションや家賃の一部を補助する「改正住宅セーフティネット法」が2017年10月に施行された。
その影響について山本さんは「大家さんの理解は増しましたが、直接的なメリットはまだないです」という。とはいえ「近居割」というサービスで高齢者の転居を後押しするUR都市機構や、補助金を用意する自治体も増えている。順風ではないものの、道筋は着実に整備されてきている。
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【プロフィル】山本遼
やまもと・りょう 不動産会社「R65」代表取締役。愛媛大卒。愛媛県の不動産会社に就職し、後に起業。シェアハウス運営とともに、R65を設立して高齢者向けの賃貸物件の仲介サービスを展開している。
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■多様な高齢者住宅で選択肢増
高齢者向け住宅はバリエーションが増えており、さまざまな形態が全国で伸び続け、共同住宅スタイルでは、認知症の方たち向けの「グループホーム」や、終末期を意識した「ホームホスピス」なども誕生している。
選択肢は増えているが、たとえば自立型の住まいは要介護度が上がったら退去を求められる物件が少なくない。いったん入居した高齢者住宅が必ずしも終の住処(すみか)にならないことを念頭に置きたい。(『終活読本ソナエ』2018年秋号から、随時掲載)