押しつけない
一方、十勝むつみのクリニックの長沼睦雄(むつお)院長は「子供自身も、自分の性質を理解することが大切」と話す。
HSCは自分のつらさをあまり語らないため、まずは、子供が嫌なことは嫌だと言える安心安全な関係を作ることが大切だ。「見方や感じ方、考え方を尊重し、価値観や判断を押しつけない。敏感であることのメリットや大切さを伝えるといい」と長沼院長。親子で話し合ってルールを作り、破ったときにはまず理由を聞くと良いという。
長沼院長は「HSCを知らないと、病気を治そうという視点になる。HSCだと分かると受け入れることができ、親も子も楽になっていく」と話している。
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■学校の環境が苦手 不登校の原因にも
HSCは不登校の原因の一つとしても注目されている。
東京都町田市の主婦(33)は一昨年、新聞でHSCを知り、「自分のことだ」と驚いた。中学から私立女子校に通ったが、教室のざわめきや教師の大声が苦手で、通学で満員電車に乗ると疲労感でぐったりした。「そんなことで、と思われるかもしれないけれど本当に消耗した」
学校生活や人間関係に問題はなかったが、環境に耐えられず高校1年の夏ごろから不登校に。その後、静かな環境を求め、定時制の高校に通い、通信制大学を卒業した。「学校に行けない自分を責めていたが、HSCだと分かって安心した。治るものでもなく、つきあっていくものと理解し、気が楽になった」
十勝むつみのクリニックの長沼睦雄院長は「敏感さの問題で来院する親子は、不登園、不登校の悩みを抱えているケースが多い」と指摘。「まずは安心安全な環境を保証し、ゆっくり休ませることを勧めます」
不登校・引きこもりの専門紙「不登校新聞」の石井志昂(しこう)編集長は「一時的に保健室登校にしたり、フリースクールに通ったり、本人に適した教育環境を利用してもいいのではないか」と話している。