親子でわくわく かがく絵本

「中をそうぞうしてみよ」

 ■見えない本当の世界へ

 昔、担任として受け持ったヒロ君のことを、私はひそかに「ブンカイヤ」と呼んでいました。ままごとキッチンの蛇口やシンク、引き出しの取っ手を全て引き抜き、ただの丸い穴があいた四角い木箱にしたり、おもちゃの車の車体とタイヤ、部品をバラバラにしたり。そこにヒロ君がいた後、なぜか物が分解されているのです。

 でも、ヒロ君は驚くほど真剣でした。「これってどうなっているんだろう?」。物を分解し、その成り立ちや仕組みを解いて、外からは見えない内側の世界を知りたかったのでしょう。そんな子供の好奇心や探求心をかきたててくれる絵本があります。

 平成20年に福音館書店から刊行された『中をそうぞうしてみよ』(佐藤雅彦+ユーフラテス)は、身近な物をX線で透視した写真絵本です。椅子を透視すると組み立てるのに使われた釘が見え、貯金箱は中のお金、二色鉛筆は芯が見えてきます。

 「そうぞうしてみよ」の言葉通り、いつも見ている側から、内側の見えない世界へと思いを巡らせるには、想像力が必要となります。X線写真では、黒い背景にいつも見ている側の物の形がぼんやり見え、その中に白くくっきりと内側の世界が浮かびあがってきます。子供たちは「中はこうなっていたのか。なるほど!」と、見えない本当の世界を知る楽しさを味わうのです。大人は、子供たちのそんな時間を十分に保障したいものです。そこから、「なんでだろう?」と理由の探究が始まるからです。

 絵本の作者、佐藤雅彦さんが月刊絵本「かがくのとも」の50周年記念特設サイトに寄せた素敵な詩「理由がある」を紹介します。「空が青いのも 葉っぱがみどりなのも 蜂が黄色と黒なのも ちゃんと理由がある。(中略)かがくのともは そのおもしろさを知る入り口。かがくのともはそのふしぎさを知る入り口。そしてきみたちは、まだ人類が知ることのない あたらしい理由を みつけるひとになれ。」(国立音楽大教授・同付属幼稚園長 林浩子)

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