赤血球や白血球、血小板の元となる「造血幹細胞」を大量に培養する方法をマウスの細胞実験で見つけたと、東京大の山崎聡特任准教授(幹細胞生物学)らのチームが、英科学誌ネイチャーに発表した。細胞分裂を促すが長期の培養は妨げていたタンパク質の代わりに、医薬品のコーティングにも使われる樹脂を培養液に加えた。
人の細胞にも応用できる方法とみられ、白血病など血液の病気に対する移植治療用の細胞の新たな供給手段になる可能性がある。
山崎さんは「わずかでも造血幹細胞があれば、増やして複数の患者に移植できるようになるだろう」と話した。
ウシの血清に含まれるアルブミンというタンパク質は細胞培養によく使われるが、実は精製過程で入る不純物が、造血幹細胞を別の細胞に成長させてしまう作用を持つことが今回、分かった。
そこでポリビニールアルコールという樹脂に代えると、培養できる期間が1週間ほどから数カ月に伸び、1カ月で最大900倍に増殖させることができた。マウスに移植すると、血球をつくる機能も確認できた。
造血幹細胞移植は、正常な血球がつくれなくなる白血病などの治療法の一つ。だが細胞の提供者不足や、質の良い細胞を十分に増やす方法がないことなどが課題だった。