ゆうゆうLife

家族がいてもいなくても(599)美しきシルバーの夜 (1/2ページ)

 9人乗りタクシーで、美味(おい)しいものを食べに出掛けた。

 主宰したのは、そのものずばり、「美味しいものを食べる会」。コミュニティー内には、いろんな会があるけれど、私は、「美味しいもの」とか、「温泉を楽しむ」とか、に弱い。入居以来、そういうお誘いには欠かさず参加している。おかげで、那須の和食の美味しい店とか、評判のステーキハウスなどを少しずつ覚えてきた。

 今度は、「お寿司(すし)を食べに行くよ!」と、主宰のシェフが言うので、楽しみにしていた。

 この日は、タクシーを使ったが、那須では、人をそこそこ集めれば、無料で送迎をしてくれる店が多い。

 全員がお酒を飲めるし、時にはコミュニティーの外へ出かけて飲み会をやると、解放感も増す。隣人同士の距離もぐんと縮まる。

 いつもは普段着姿の面々が、ちょっとおしゃれな外出着だったりするのも、なんか新鮮。

 この日、集まったのは、「自分の車で行く」というお酒が飲めない一人を含め、総勢10人。

 車で20分ほどのところでも、「みんなでお出掛け」には、それなりの高揚感がある。

 到着したのは、ちいさなお寿司屋さん。レイアウトがおしゃれなカフェふうで、意表を突かれたけれど、細長いテーブルをシニア世代で囲んで、3000円のコース料理を楽しんだ。

 お造り、茶わん蒸し、握り寿司、デザート…、と中身が充実しているのに安い。この食べ物の安さは、都会から移住してきた甲斐(かい)があったなあ、との思いにさせてくれる。

 半世紀も前に経験した学生時代のサークル気分で飲み会などをやっていたら、ふと思い出してしまった。東京で一人暮らしをしていた頃、バーのカウンターで、一人静かにグラスを傾ける老婦人に遭遇したことがあったなあ、と。その姿に、私もああいうかっこいい老女になろうと、思ったものだ。

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