「年金だけでは約2000万円、老後資金が不足する」とした金融庁の“報告書”が話題になっています。金融広報中央委員会の調査(平成28年発表)で、実際の金融資産保有額を見てみると、世帯主の年齢が60歳代の平均貯蓄額は1509万円、70歳代では1379万円になっています。70歳代は年金生活で貯蓄が減った結果だと思いますが、いずれも2000万円を下回る結果に。さらに注目すべきは、金融資産を持たない世帯が30.9%もある現実。老後の生活不安を軽減するのは難しそうです。
ところで、「老後に必要な資金はいくらか」は、日頃から多く受けるご質問です。そのご質問には「各家庭の年間の赤字額から試算できます」と答えています。ここで注意すべきなのは、年間の赤字額は月の赤字の12カ月分に、特別支出を加算したものになるということです。
特別支出というのは、固定資産税、自動車税などの各種税金、介護費用など。月の赤字だけに注目していると、実際に必要な老後資金額とは異なった金額が算出されてしまいます。
特別支出を加算すると、老後資金の必要額はさらに膨らみます。すでに十分な金融資産をお持ちの方は別として、老後資金が不足しそうなご家庭では、「生活費のコスト削減案を夫婦で話し合う」「65歳以降もアルバイトなどで少し稼ぐ」「今より小さな家に住み替える」「車の買い替え時に排気量を下げる」など、具体的なプランを考える必要があります。公共交通機関を利用しづらい場所にお住まいの方は、車がないと生活が成り立たないかもしれません。住み替えは気がすすまないはずですが、バスで病院に通えるエリアなどに住み替えれば、車を手放せる可能性が出てきます。老後資金不足に対応するには住まいや車のように、手を付けにくい「大物」の見直しから検討するのがおすすめです。(ファイナンシャルプランナー 畠中雅子)