ヘルスケア

iPS角膜移植 阪大教授「ドナー不足解消につなげたい」

 大阪大が29日に発表した、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った角膜細胞シートを、移植した世界初の臨床研究。安全性や効果を実証できれば、角膜異常による視力の低下に悩む患者にとって、画期的な治療法が確立されることになる。記者会見した西田幸二教授は「慎重に経過を見ていきたい」としながらも、今後の実用化に向け意欲を示した。

 「今のところ、経過は問題ない。視力もかなり改善している」

 大阪大吹田キャンパス(大阪府吹田市)での記者会見。西田教授は緊張感を漂わせた表情で、こう切り出した。

 西田教授らがシートを移植したのは、「角膜上皮幹細胞疲弊症」の40代の女性患者。外傷や病気が原因で、角膜の最も外側部分で幹細胞が失われ、角膜が濁って視力が低下する疾患で、現在の有効な治療法は、ドナーによる角膜移植しかない。ただ、その場合でも、効果を維持するのが難しいとされており、「既存の治療法では、角膜の病気の中で最も治しにくい」という。

 移植手術を受けた女性は、最も症状が重い「ステージIII」で、ほとんど視力がない状態だった。シートを移植した左目の術後の経過は良好で、現在は退院。視力の数値などを公表しなかったが、西田教授は「ほとんど見えなかったのが、日常生活に支障がない程度には回復した。喜んでおられると聞いている」と表情を緩ませる場面もあった。

 これまで、唯一の治療法だった角膜移植は、ドナー不足や、移植による拒絶反応が起きやすいなどの課題がある。角膜に他人の角膜などを移植した場合、拒絶反応は1年以内に起こることが多い。

 西田教授らが使ったiPS細胞由来のシートでは、安定した品質で生産することが可能で、角膜移植に比べ、拒絶反応も起きにくいという。順調に進めば、5~6年後には実用化できる可能性があるといい、西田教授は「iPS細胞を使った治療法は未知の点も多い。まだ始まったばかりだが、安全性や有効性が証明できれば、角膜移植が難しいケースや、ドナー不足の解消につながる」と期待を込めた。

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