キーホルダーは東京都理学療法士協会が昨年から作製し、今年8月末までに約5千個を希望者に無料配布した。小学生らを対象に、2列に立ち止まるよう「乗り方教室」も開き、東京五輪・パラまでに片側空けをなくす目標を掲げている。
同協会の「エスカレーターマナーアップ推進委員会」の斎藤弘委員長(40)は「社会の多様性の中で、止まって乗りたい人がいるという気付きや、思いやりが広がってほしい」と語る。
介助や盲導犬利用
視覚障害者も、慣習見直しに期待している。日本盲人会連合の橋井正喜常務理事(68)によると、介助する人や盲導犬が横並びで乗ると、後ろから舌打ちされたり、あおられたりすることがあるという。「急ぎたい気持ちも分かるが、我慢してもらえたら」と話す。
近年、東京消防庁管内だけでも年1400人前後がエスカレーターの事故で救急搬送されている。歩行防止が長年の課題となっているJR各社や全国の私鉄事業者などは「みんなで手すりにつかまろうキャンペーン」を例年夏ごろ展開。今年は「乗り方改革」と題し、「手すりにつかまる」だけでなく、「歩かず立ち止まる」と初めて直接的に呼び掛けた。
「急ぎの時に困る」と一部から苦情もあるが、安全のため理解を求めている。
JR東日本の担当者は「大きな荷物を持つ外国人観光客や、つえをつく高齢者など多様な人が行き交う場。長年の慣習をすぐに変えるのは簡単ではないが、この機に変わっていけばいい」と話している。