受験指導の現場から

合格に導く「過去問フォーメーション」とは? 受験生のやる気も尻上がり (3/3ページ)

吉田克己
吉田克己

受験生本人に強く意識させるべきこと

 じつは、考えてみれば当たり前なのであるが、合格者平均点を取れなければ合格できない、ということはない。倍率2倍であれば、受験者平均点で合格するし、倍率3倍であれば、得点分布の具合(平均点と中央値のずれなど)によるが、受験者平均点と合格者平均点の真ん中よりも少し上が合格ラインとなる。

 しかしながら、受験生本人に強く意識させるべきは、あくまでも明示的な合格者平均点である。本人に「あと、これとこれとこれができていれば、合格者平均点を超えたんだ」「あと○問、取れるようになれば合格できるんだ」という実感を持たせることができれば、滑り出しは上々と言える。その上で、複数年度分を進めていく中で、合格者平均点との差が縮まってくればしめたもので、本人のやる気も膨らんでくるはずだ。

 私見ではあるが、この時期、成績がふるわないからと言って、あるいは夏期講習前に比べて偏差値が下がってしまったからと言って、集団授業を追加して時間をぎりぎりまで埋めてしまうのは愚策である。受け身の時間をいくら増やしたところで、質は上がらない。それこそ、過去問は一度解いて採点しておしまい、本人ともども自信をなくすだけ、という状況に陥りかねない。

過去問は取り組み方が肝心

 筆者の経験では、過去問の取り組みを上手に回すことで、本人に合格ラインとの距離感が生まれやる気も回復、あるいはそれまでの最高レベルとなって11~12月にぐっと得点力が伸びた、という生徒は少なくない。とくに、二番手クラスの上位にいる男子はこの傾向が出やすかった。

 今の時期、冬期講習までの期間の時間の使わせ方に迷いがあるようなら、真っ先に過去問フォーメーションを固めるのが妙策、という可能性を考えたいところだ。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「SankeiBiz」「ダイヤモンド・オンライン」で記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら

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