お金で損する人・得する人

老後資産形成へ税制優遇でも「iDeCo」が広まらない本当の理由 (3/3ページ)

高橋成壽
高橋成壽

 投資助言・代理業者は2019年7月末現在で983社存在するが、まとまった資金の運用などの助言が主であり、iDeCoに関する投資相談に対応するとは考えにくい。対応したとしても、それなりの助言報酬を支払う必要があるだろう。それ以前に、どの投資助言・代理業者に相談すべきか比較する材料がないので、比較自体が困難である。

 金融審議会レポートでは、老後資金形成のためには資産形成のアドバイザーが必要だと訴えていた。しかし、最も身近な相談者であるファイナンシャルプランナーは業界をあげて、コンプライアンスに違反しないように注意喚起しており、投資に関するアドバイスをしない方向に動いている。従って、iDeCoに関する相談ができる先は、金融機関しかないことになる。しかし、金融機関の担当者が投資に詳しいわけではないから、結果として相談する先はないという事になる。

 本気でアドバイザーを養成するのであれば、ファイナンシャルプランナーに対して所定の研修を行った上で、業務に使えるツールを提供する必要があるだろう。

 また、iDeCoの相談にお金を払いたいと考える人も少ないため、政府の予算編成の中で、iDeCo普及に関しての相談を実施するための予算を、金融庁内で確保した上で、しかるべき資格をもった人たちへの相談を金融庁として実施する必要があるだろう。その際、相談した人たちからのクレーム、例えばアドバイスをうけた銘柄で損失が発生しているといったような内容を受けることを前提としておくべきだろう。

 今や、ファイナンシャルプランナーは国土交通省の予算で空き家相談を受けたり、独立行政法人日本学生支援機構の予算で奨学金に関するセミナーや相談を実施したりしている。金融庁が本気でiDeCoを普及したいと考えるのであれば、予算を計上した上で国民全体に対しての啓蒙と相談会の実施、手続きのサポートが必要だろう。

 政府が信用されていない

 最後に、残念ながら我が国の政府は20代、30代に信用されていない。iDeCoを始めたはいいが、税制優遇が後で無くなるのではないか、後でちゃぶ台返しを食らうのではないか、ということを恐れている。

 金融庁系の審議会で老後資金が2000万円足りないと発表し、一方で公的年金の財政再計算で年金財政の安定性を強調してみたりと、方向性がバラバラで傍から見ていて何か隠しているんじゃないかと疑心暗鬼になるのは、若い世代だけではないだろう。実際に、政府が信用できないからiDeCoをやらないという人も多数いる。色々な施策で、iDeCoの普及に弾みをつけることはできるだろう。しかし、根本的な政府への信用が担保されていない現状を、そもそも改善すべきなのではないか。ただ、残念ながら筆者には、政府が信用されるように改善する案は考えつかない。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus