終活の経済学

お寺のトリセツ(4)「寺院葬」活用術

 ■ポイントは初動の「直接連絡」

 お寺での葬儀「寺院葬」が注目されている。「葬儀会館」ではなく「お寺」で葬儀を挙げてしまうのだ。葬儀費用が抑えられる上に、寺の本堂の厳粛な雰囲気の中で故人を送れるという魅力がある。“最強のお寺の活用術”である「寺院葬」。ポイントや注意点を確認しておこう。

 ◆まず菩提寺に相談

 「寺院葬」とは、文字通りお寺で葬儀を挙げること。かつてはお寺や自宅で葬儀を執り行うことが普通だったが、葬儀の「簡略化」や「参列者の増加」、「利便性」などが求められた昭和期から、葬儀会館(民間の式場や斎場)での葬儀が一般的になっていった。

 加えて、マンション住まいなど住宅事情の変化や、都市化によって菩提(ぼだい)寺のある故郷を離れて暮らす人が増えてきたことも、葬儀会館での葬儀を増やす要因になった。

 しかし近年では、小規模の葬儀が増え始め、「寺院葬」が見直されつつある。

 多くの場合、「寺院葬」は祭壇費や葬儀社の人件費を抑えられるため、民間の葬儀会館を使用するよりも割安で済む。何より、宗教的な空間で、心の込もった葬儀を行えると好評のようだ。

 寺院葬を行うにはどうしたらよいか。ポイントは、遺族が最初に「葬儀社に連絡する」か「寺院に連絡する」かだ。一般には分かりにくい点だが、これで葬儀の執行を葬儀社が主導権を握るのか、お寺が握るのかが変わり、手続きや葬儀の場所、内容、注意点も違ってくる。

 寺院葬を希望する人で、菩提寺がある人は、菩提寺に相談するのが一番手っ取り早い。

 広島県の40代の副住職は「正直、寺院葬となると気合いが入る。葬儀の大小やお気持ちに差はないとはいえ、民間の斎場に出向いてポクポクやっておしまいよりも、徹頭徹尾お見送りをできるので宗教者としては気持ちが入りますよ」と鼻息が荒い。

 東京都八王子市の曹洞宗興福寺、雨宮範雄住職は「古式にのっとったいい葬儀をするなら、菩提寺に相談して寺院葬をするのが一番いいと思います。お寺主導の葬儀なら、寺が信頼できる葬儀社に進行や祭壇手配を依頼できます。万一、葬儀社が費用を上積みしようとも、住職が目を光らせることができます」と話す。

 そのうえで「いい寺院葬にするためにも、住職を含めて打ち合わせをすることが大切です。ですが、『寺院葬』イコール『お金をかけない』葬儀ではありません。身内での少人数の葬儀でも、身内だからこそ費用をかけられる方もいらっしゃいます」とアドバイスする。

 僧侶のなかには付き合いの少ない葬儀社を介して寺院葬をすることに消極的な声もある。

 「よく知らない葬儀社にぜひ、と請われて寺院葬をしましたが、本堂を傷つけられたり、お寺の仏具を持って帰られたり、逆にいろいろなものを置いてかれたりと、大変でした。もうこりごり。寺院葬をするなら、まずはお寺側に連絡してほしい。お寺が葬儀社を手配すれば、無駄な心配をせずに安心して法務に専念できます」(宮城県60代住職)

 ◆施設の事情で制限も

 注意したいのは、檀家だとしても必ずしも寺院葬ができるとは限らないことだ。スペースの問題や、付帯施設の問題などがあるからだ。

 また、寺院葬の申し込みができたとしても何もかも融通が利くわけではない。

 埼玉県飯能市の真言宗智山派円泉寺の諸井政昭住職は「うちは小さなお寺ですので、お子さんやお孫さんが多いご家庭だと難しいこともあります。だいたい30人ほどまでの葬儀であれば実施が可能です。本堂に冷暖房がないので、真夏は厳しいかも。扇風機をフル稼働させてもご年配の方は大変です。これまでの寺院葬にはご満足いただけたとのお声をいただいておりますが」と話す。お寺それぞれの事情があるのだ。

 葬儀社にとっても、寺院葬に立ち会うことは貴重な経験になっているようだ。神奈川県にある伝統的な葬儀社の社員は「まだ件数は少なめですが、寺院葬をされた遺族の方は、葬儀の満足度が非常に高いです。寺でお見送りができることは大切なんだなと感じます」と肯定的にとらえる。

 その一方で、「経験上、東京都内や名古屋周辺の手配は難しいことが多いです。都市部では境内に斎場を併設しているお寺がたくさんあるので選択肢は多いのですが、費用設定が高いところも多く、施主(遺族)さんと折り合わないこともあります。ここだけの話、お金持ちのお寺さんのなかには、寺にとって手間がかかるばかりの寺院葬を増やしたくない、とお考えの方もいるのではと感じます」と打ち明ける。必ずしも、寺院葬が、寺と遺族双方にとってメリットばかりということではないようだ。

 「寺院葬はお寺さんの都合が重要となります。土日に法務が多いので、友引以外の平日となることがほとんどです。そのため、ご遺体の保管期間が長くなり、ドライアイス代など必要経費がかさむこともよくあります。結果、追加の費用を請求せざるを得なくなることは、ご了承いただけないとつらいです」(東京都の葬儀社社員)という声もある。(『終活読本ソナエ』2019年夏号から、随時掲載)

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