その女の子は、2連敗したところで完全に心が折れてしまった。魂が抜けてしまったというか、3戦目はまったく実力を発揮できなかったようだ。
逆に、2戦目で勝つ典型例として、2月1日と2日に同じ学校を続けて受けて、2回目に合格! というケースはけっこう見てきている。
我が子がもし、立ち直りに時間が掛かる(気持ちの切り替えが上手くない)タイプであるなら、とくに女の子ならば、連敗の虞を可能な限り抑えた受験パターンを組みたいところだ。
本人の第1志望は受験日間近でも変わることがある
筆者には、親子の志望校の喰い違いに起因する苦い経験がある。こちらもまた女の子の例である。
小6になって、もう少しで第1志望校に手が届きそうな状況だったのだが、夏期講習会の直後に成績が急落してしまったことで、受験直前期の数カ月間、過去問対策を中心に個別指導を引き受けることになった。
その当初は、母子の志望校は第1志望、第2志望とも一致しており、押さえをどこにしようか? という段階であった。父親には特段の強い意思はない。
成績と照らしわせたところ、第1志望がS'、第2志望がAという線で、「押さえには1月にA'~Bを入れ、都内は中日(なかび)にA'を挟もうか」との意向。1月の受験校を確定させたのは12月に差し掛からんとする頃で、都内の第3志望は、本人が気に入るところがなかなか見つからず、最終的に第1志望と第2志望を複数回ずつ受けることに落ち着いた。
ところが! 冬休みに入る頃には、本人にとっていちばん行きたい学校が、郊外にある1月受験の学校に変わっていた。本人としては、家庭内でもそれとなく、「○○中学がいいなぁ。◇◇だし、▽▽だし」という感じで口に出していたようなのだが、その本気度が汲み取れないまま、その学校の受験日を迎えることになる。
その学校には合格してくれたので、筆者としては最低限の面目は立ったのだが、その後、事態が急展開する。
休日の午前と午後に科目別に個別指導の予定が組まれていたのだが、なんと! 本人が朝食直後にこっそりと自宅を抜け出してしまい夕方まで帰ってこない、ということが立て続けに起こった。
本番直前に一度だけ顔を合わせることができたのが…、その後、朗報は入ってこなかった。憶断するに、本人としては、都内の学校に合格する気は失せていたのだろう。
事程左様に、難易度が高い同程度のところばかりを受けさせて、「どこかに引っ掛かるだろう」と考えてしまうのは確証バイアス(楽観バイアス)であり、薄氷を履むが如し。それ以上に、親子間で第1志望に齟齬が生じてしまうことは、危うきこと累卵の如しなのである。
受験パターンの最適化のためには、慎重の上にも慎重に、石橋を叩いて渡るくらいで丁度よい。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら。