ある温度を境にして電気抵抗がゼロになる状態を「超伝導」という。超伝導状態では、「クーパー対」と呼ばれる電子対が形成され、エネルギーの消費がないため、電流が永久に流れる。クーパー対は2つの電子が空間的に離れた「量子もつれ状態(複数の粒子間に生じる量子力学的な相関)」にあることから、2つの電子を分離できれば、量子コンピュータなど量子情報処理の高速性が期待される。しかし、これまでクーパー対を分離するには、電子の閉じ込め構造である量子ドットを用いる方法しかなく、分離された電子の持つ量子もつれ状態に関する研究は停滞していた。
今回、理研の研究チームは、並列に配置した2本の半導体「ナノ細線」インジウムヒ素(InAs)上に、超伝導体アルミニウムを接合したデバイスを作製した。接合間を流れる超伝導電流を測定した結果、量子もつれ状態にあるクーパー対を形成する2つの電子が、2本のナノ細線中へ効率良く、物質中の不純物などにぶつからずに弾道的に分離する現象を発見した。また、この分離効率が1次元電子の相互作用により著しく増大することも明らかにした。
今後、分離効率のさらなる増加や、1次元電子回路中での量子もつれ状態の制御という新技術の誕生、さらに、クーパー対分離を用いた新たな量子現象を発現するデバイスの実現や、固体中での量子もつれ状態が持つ基礎物性の解明が期待できる。
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【プロフィル】松尾貞茂
まつお・さだしげ 京都大学理学部卒。大阪大学特任研究員、東京大学工学部助教を経て2019年4月から現職。また、18年10月から科学技術振興機構さきがけ研究員も兼任。
■コメント=半導体ナノ構造をデザインして新たな現象を創出し、その物理を解明したい。
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■「理研DAY 研究者と話そう!」 来月15日に開催
基板上に近接して並んだ2本の半導体ナノ細線(InAs)に、超伝導体アルミニウム(水色の領域)が接合されている。2つのゲート電極(オレンジの領域)に電圧を加えることで、それぞれのナノ細線の電気伝導度を独立に制御できる。
理化学研究所は研究者と直接話せるイベント「理研DAY 研究者と話そう」を12月15日、東京都千代田区の科学技術館で開催する。講師は仁科加速器科学研究センターの高峰愛子研究員で、テーマは「原子核を捕まえて光でみる」。
水素、ヘリウム、リチウムといった元素には、それぞれ原子番号が割り当てられ、元素の中には陽子と中性子から成り立つ「原子核」があり、その陽子の数で原子番号が決まる。高峰研究員は捕まえた原子核を、光を使って測る研究をしている。開催要項は次の通り。
【日 時】12月15日(日) 第1回 14:00~14:30
第2回 15:30~16:00
【対 象】一般
【場 所】科学技術館4階シンラドーム(東京都千代田区北の丸公園2-1)
【料 金】無料(ただし、科学技術館の入館料は必要)
【定 員】各回62人(先着順)
【研究者】高峰愛子研究員(仁科加速器科学研究センター核分光研究室)
【テーマ】「原子核を捕まえて光でみる」
【参 照】https://www.riken.jp/pr/visiting/riken_day/
問い合わせは理化学研究所広報室 E-Mail:outreach-koho@riken.jp