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日本から視察も 体験して感じたホームドクター制度のメリット・デメリット (2/3ページ)

 「医療費負担が少ない」の次に存在感があるメリットは、ホームドクターとの信頼関係の構築だ。体調不良のたびに同じ医師に会うシステムは患者にとっても安心感が大きい一方、医師にとっても患者が住んでいる地域や生活状況、家族も含めた病歴などの膨大なデータの蓄積が的確な診断の支えになることは想像に難くない。特にこの制度との関連が指摘されるのは、オランダで認められている安楽死だが、実行には長期にわたりその患者を診察してきたかかりつけの医師による承認も必要となる。

 他にも、

 ・小さな診療所に時間の予約をして行くため、待ち時間も短く他の患者とウイルスの移しっこをする危険も少ない

 ・受診に来る患者の数が絞られるので、いざ診察を受ければそれなりの時間を取って話を聞いてもらえる(いわゆる日本の大病院で問題視される『3時間待ちの3分診療』のような現象は起きない)

 ・薬に頼らずに健康を維持しようという意識が高まったと同時に、めったに薬を飲まないので、いざ処方されるとてきめんに効く

 ・ホームドクターが全ての診療科をカバーしているので、自己判断で受診した科がお門違いで違う診療科に出直すことになった、などという問題も起こりにくい

 などもメリットに感じている。

 ホームドクター制度のデメリット

 このように数年利用してそれなりにメリットを理解したつもりのホームドクター制度だが、もちろんデメリットもある。

 最も怖く感じるのは、深刻な病気が見過ごされて、自宅療養している間に悪化してしまうというケースがまれにあること。ましてや患者が奥ゆかしい日本人の場合、医者の言うことに疑問が残っても、それを無遠慮に口に出すことをはばかることも考えられる。「初めから専門医に見てもらえばよかった」などという遺恨を残さないためにも、患者にも自分の治療に能動性が求められるという意味では、お医者様が絶対的な日本の医療文化との相性は決して良くはないかもしれない。

 また、日本社会との相性に限って言えば、「こんなの専門医に即時治療してもらうまでもないよ、家で一週間寝ていれば治るよ」と言われたところで、病気休暇を取って寝ていられる人がどれくらいいるかという話がある。「風邪の治療薬はない」なんて知っているから、「とりあえず仕事をしても辛くない程度まで症状を抑える薬をくれ」という人も多いだろう。

 他にも知人の日本人医師は、「日本人はブランド志向だし、やっぱりなるべく偉い専門家に自分の体を任せたい人が多いから、ホームドクター制度なんか紹介されても、やっぱり専門医のいる大病院に直接かかりたいっていう風潮は消えないんじゃない? あとオランダみたいな(かかりつけ医の)システムが定着しちゃったら、大病院も製薬会社も商売あがったりだよね、ハハハ」と笑っていたが…これは素人の筆者には確かめようのない話である。

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