ゆうゆうLife

家族がいてもいなくても(617)“冬眠”の前に

 秋が深まり、那須では冬支度が始まっている。

 私にとっては2度目の冬なので、ストーブの燃料の準備やら車の冬用のタイヤ交換などを滞りなく済ませることができた。

 そして、コミュニティーでは今年最後の運営懇談会が開かれた。その日、不意に冬季休業になる前に、「素敵(すてき)なカフェに行こう」と誘われていたことを思い出した。トールペイント仲間のお姉さん夫婦が、森でカフェをやっている、と聞いて一度、行ってみたいなあ、と思っていたのだ。

 慌てて聞くと、「今から行くよ、車の席が一つ空いている」とのこと。ただちに仲間入りし、那須高原の隠れ家、と呼ばれているそのカフェへと向かった。

 2台の車に7人が分乗。那須街道から那須高原スカイラインへ…、と車を走らせ北部の高地に向かうほどに紅葉の美しさが際立っていった。

 カフェは、広い別荘地区内の森の中にひっそりとあった。

 元商社マンとその妻が、自宅のリビングを開放して開くそこには、薪ストーブが赤々と燃え、陶芸や木工などの創作作品が飾られ、なんとも居心地がよかった。出されたランチもスイーツも美味(おい)しく、男性たちはこれにアルコールがあったらなあ、などとぼやいていた。

 が、女性たちは、窓から望む秋の美しい森にうっとりしつつ、いつものごとくお喋(しゃべ)りが弾んだ。私は、長年の夢だった「焼きリンゴ」を賞味。そのとろけるような味に、「赤毛のアン」に夢中になっていた過ぎ去りし少女時代に思いを馳(は)せてしまった。

 那須に移住して1年半。

 暮らしのステージを変えると、そこに住む人には慣れ親しんだ日常も、こちらにはすべてが新鮮な体験で、そこからさまざまなインパクトを受ける。

 「このお庭に、森の猿たちが集団で来て、庭の低木で子猿の木登りの訓練をするのよ」なんて話に目が点になる。

 この地では、早めにリタイアして移住してきた人たちが、小さなパン屋さんをやったり、カフェを開いたり、趣味を生かした様々(さまざま)な工房を開いたりしている。おおむね、週末だけとか週に2日のみなどのんびりとやっている。たいてい冬は休業、森が芽吹き始める春までは冬眠。ここでほっこりし英気を養い、春に再会する。

 このリズムがいいなあ、と思う。

 私も、冬眠前に行きたかった場所に行けて、春を待つ楽しさがまた増えたなあと思う。(ノンフィクション作家)

                   

 ■あすからヨツモトさん新作展

 「家族がいてもいなくても」で、イラストを描いているイラストレーター、ヨツモトユキさんの新作展「ますように」が23日、東京都目黒区の東急東横線・学芸大学駅近くにある書店「SUNNY BOY BOOKS」で始まる。

 テーマは「絵馬」。あと1カ月余りで新年。「~ますように」というさまざまな人の願いを、ヨツモトさんが描く。12月5日まで。問い合わせはinfo@sunnyboybooks.jp。

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