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自分も気づかぬ「欲しいもの」 デジタル化で失われる買い物経験 (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 「イヤホンで音楽を聴いていい気分になっているそのままで服を買いたいんだ。そこを店員に邪魔されたくない」

 そう語る学生もいた。自分の世界に浸りながら、すべてをこなすのを理想としている。ファッションのコミュニケーションの世界に浸りきりたいとは思わないらしい。

 言うまでもないが、どういうアイテムを買うかにもよるだろう。Tシャツなのか、ジャケットなのか、スーツなのか。価格帯にもよる。

 確かにスニーカーは音楽を聴きながらマッチするアイテムかもしれない。しかしスーツを決めるのにも、店員との対話を嫌がるのだろうか。

 ファッションのカジュアル化が進んでいる。高級ブランドメーカーもスニーカーを主力製品と位置付けている。フォーマルな服が高級の証ではなくなって、それなりの年数が経っている。

 一方、高級ブランドが高い不動産価値のある店舗だけでなく、ポップアップストアにおいて、そこでしか味わえない経験を提供することに力を入れている。しかも、その対象としてミレニアル世代からZ世代を視野に入れはじめている。

 どうも、こういう全体の動向とぼくがワークショップでみた傾向の辻褄が合わない。そして、かつてミラノにあったという靴の店のことを思い出す。

 そこには店内にソファがあるだけだ。客を迎えた店員がゆったりと会話を交わし、客のことがよく分かると、店員は地下にある陳列台をみているスタッフに連絡。客が「気に入るであろう」と選択された靴がガラスケースに入って、一階まで自動的に運ばれてくる。客は自分も気づかなかった「欲しいもの」をギフトのように喜び、財布の紐を緩める。

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