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JR特急不毛の地に復活した「まほろば」 古都の鉄道網に変化起こすか

 【時刻表は読み物です】新大阪と奈良をノンストップで結ぶJR西日本の臨時特急「まほろば」が11月2日から運行。12月8日までの土曜日・休日に1日1往復、広島、福岡方面から新幹線でやってきた観光客らを奈良に呼び込んだ。鉄道ファンの間で知られているのが、奈良県は唯一、定期運行のJR特急が通らない都道府県(JRのない沖縄県は除く)ということ。JR特急の「不毛の地」といえる古都の鉄道網に変化が起きるきっかけになるか、注目される。

 「まほろば」は上りは新大阪を10時3分に発車。今春に全線開業したおおさか東線、関西線を通って奈良に10時53分に到着。下りは奈良を16時56分に出る。上下とも途中停車駅はない。奈良で牙城を築く近鉄への挑戦の旗頭として位置づけられ、利用状況が好調であれば、定期列車化も見えてくる。もし実現すれば、奈良にとっては半世紀以上ぶりの出来事となる。

 奈良は大阪、京都へ近い上、近鉄が特急網を張り巡らせていることもあり、国鉄、JRの特急とは縁遠かったといえる。今回の「まほろば」の前に特急が走ったのは9年も前になる。

 「JTB時刻表・平成22年3月号」(JTBパブリッシング)を開いてみよう。関西線のページを見ると臨時特急が確認できる。愛称は、こちらも「まほろば」だ。平城遷都1300年記念事業に合わせ、同年4~6月の土曜日・休日に運転された「平成のまほろば」は新大阪を10時32分に発車。おおさか東線は存在しなかったため、「令和のまほろば」とは違い、梅田貨物線から大阪環状線、関西線を経て奈良に11時27分に到着。途中、天王寺、王寺、法隆寺に停車した。当時は訪日外国人はまだ少なく、期間限定と決められていたためか、定期化されることはなかった。

 「平成のまほろば」以前にも昭和62年から約2年間、京都から奈良線、関西線、阪和貨物線(八尾-杉本町、現在は廃止)、阪和線、紀勢線を通って白浜に向かった「ふれ愛紀州路」(後に「しらはま」)が奈良県内を走ったが、これも臨時列車。定期特急となると、国鉄時代の昭和40年代までさかのぼる。

 それは名古屋と東和歌山(現和歌山)を結んだ「あすか」だ。関西線、阪和貨物線、阪和線を経由し、奈良県内は奈良と王寺に停車した。食堂車も備えた豪華な編成で昭和40年春にデビューしたが、利用状況は芳しくなく、42年秋に廃止。さまざまな理由があるが、和歌山行きが夜、名古屋行きが早朝と、走る時間帯が悪かった。これは名古屋発着の紀勢線特急「くろしお」で使用の編成で運行したため、ダイヤが「くろしお」優先になったのが原因。「あすか」は最初から悲運を背負っていたといえるだろう。

 「令和のまほろば」の運転日には奈良駅改札前に訪日外国人向け観光案内ブースが設置されることから、インバウンド需要を視野に入れていることが分かる。奈良へのアクセスで新しい流れを創出できるか。JR特急「不毛の地」からの脱出は、それにかかっている。(鮫島敬三)

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