書評

『銀河の果ての落とし穴』エトガル・ケレット・著、広岡杏子・訳

 ■不条理なのに明るい短編物語

 現代のイスラエルを代表する人気作家の最新短編集。同国で最も名誉ある文学賞とされるサピール賞を今年受賞した。

 サーカス団の人間大砲となって空高く飛んでいく「おれ」の話。屋上から飛び降りようとする男を目撃してしまった親子が交わすちくはぐで、おかしなやり取り。金持ちの女と貧しい男の偶然の出会いと、その後の人生の変転…。

 奇想とシュールな笑いに彩られた短い物語は、世の不条理や陰鬱な現実を扱っているのにからっとしていて明るい。母国で「最も作品が万引される作家」と噂されたこともある才気を堪能できる。(河出書房新社、2400円+税)

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