新たな高齢者の運転免許制度では、事故歴や特定の違反歴がある高齢者を対象に実車試験が導入される見通しとなった。高齢者講習と認知機能検査を請け負っている指定自動車教習所での実施が想定されるが、現状でも免許の更新手続きは最長で約4カ月待ちの状態だ。高齢運転者や現場の負担軽減策として、認知機能検査に人工知能(AI)やタブレット端末を導入し集計などを迅速化する案が示されたものの、待ち時間のさらなる長期化も懸念される。
高齢運転者の事故防止対策について検討していた警察庁の有識者分科会は19日、事故歴や特定の違反歴がある高齢者を対象に、免許更新時の実車試験を導入し、運転技能が特に不十分な場合は免許更新を認めないなどとする中間報告をまとめた。警察庁は今回の中間報告を踏まえ、来年の通常国会に道路交通法の改正案を提出する方針。
高齢者の免許更新手続きで義務付けられた講習や認知機能検査は、主に各地の公安委員会が全国に1321カ所(平成30年末時点)ある指定教習所に委託して行われている。
警察庁の有識者分科会の中間報告で導入が提言された実車試験も教習所が実務を担う見通しだ。試験は繰り返し受験可能とされるほか、新制度では現行の高齢者講習の項目にある「実車指導」でも新たに実車試験と同様の技能評価を行う方針が示されており、教習所の負担増が予想される。
ただ若年層の車離れなどに伴い、指定教習所は平成20年以降の10年間で約6%(87カ所)減少。全日本指定自動車教習所協会連合会(全指連)によると、厳しい経営を迫られている教習所も多く、教習所の新設や指導員の追加雇用など体制の増強は非現実的だという。
警察庁によると、高齢者の免許更新手続きの予約待ちは全国平均(今年9月末時点)で約75日と長期間に及ぶ。全国ワーストの滋賀県では平均約122日、神奈川県が同約120日と約4カ月待ちで続く。全指連の内山直人事務局長は「業務委託の見直しが行われないまま実車試験が導入されれば、現場に過度な負荷がかかり、更新手続きはこれまで以上に滞留する可能性が高い」と懸念する。