個人的なベストカーは「ゴルフGTI」
次に試乗したゴルフGTIは最も理解のしやすいクルマだった。コーナリングの限界が分かりやすいため、安心してプッシュすることができる。クルマを上手に操っているときは、ドリフト中にタイヤから綺麗なスキール音を発するのだ。FF(前輪駆動)ということもあるだろうが、クルマの挙動が突如乱れるような素振りは全くない。ハンドリングやグリップ状況など、クルマの反応から走行状態が把握しやすく、いかなる状況でもクルマをコントロールしやすい。いわゆる《クルマとドライバーの会話》が最も成り立っている一台だと感じた。
スイスポは名門「モンスター」がチューニングしたMT車だ。イベントでもなければ、こんなニッチなクルマを運転する機会などないだろう。オーバルはもちろん、走行2のハート型ウェット路でも試乗したのだが、加速もハンドリングもとにかくシャープ。足回りもカチコチに絞り上げており、コーナーで加速してもアウト側に垂れることなく、キビキビとカーブを駆け抜けていく。なかなかスパルタンな味付けで操る楽しさがあるのだ。扱いやすさはゴルフGTIに分があるが、個人的にはラインアップの中で最も速いクルマだと感じた。
スイスポでの走行を終えると、山田選手から「ウェット路はコーナーの途中でアクセルを踏まない方がいいです」と助言があった。「それでは挙動が安定しないので、コーナーを抜けたタイミングで、直進するイメージでアクセルを踏み込むともっと安定します」と改善ポイントを分かりやすく指摘してくれた。
ウェット路で苦戦したアバルト
走行2ではアバルト124スパイダーにも試乗した。ドライ路面では試乗機会がなかったので分からないのだが、スタッフから事前に聞いていた通り、ウェット路で簡単にスピンしやすいことにかなり驚かされた。これにはFRの特性に加え、車重1060kgに対して最高出力170PSというパワーウェイトレシオ(出力重量比=6.2kg/PS)が大きく影響しているはずだ。一瞬でも減速が遅れたり、無理にハンドルを切るとクルマの“お尻”がアウト側に振り回され、狙ったラインからあっという間に逸脱する。ライトウェイトのFRスポーツカーが濡れた路面でいかに挙動を乱しやすいか、ほかの車両と同時比較することで身をもって知ることができた。
というように、ひと言で「クルマ」と言っても、駆動方式やエンジンの搭載位置など構造によって性質や限界ポイントは大きく異なる。ペダルの重さやハンドルの操作感覚もばらばらだ。同じ状況下で同じ操作を行っても、クルマの反応は異なるのだ。クルマを安全に運転するには、車両ごとの特性をしっかりと理解することや、異なる環境下で車両の動きを予測できることが重要なのだと、今回のイベントが改めて教えてくれた。様々な車種をイッキ乗りできる最大のメリットはそこにある。
澤選手による講義では、《運転のうまい人・うまくない人》をテーマに参加者を交えた議論が行われた。その中で澤選手は、「重要なのは先読みができて、自らの経験や記憶を意識しながら逆算思考で状況判断できるか否か。その中で精度の高い運転操作をして、これらの経験を総合活用しながら、要領よく運転するために工夫することが大事」だと結論付けていた。
プロドライバーによる的確な指導と講義を受けながら、憧れのスポーツカーを乗り比べる機会などそうそうないだろう。しかも参加費は無料だ。佐野氏は「もし今回の体験を通じて、クルマが好きだな、買ってもいいかな、という若者が出てきたら、ぜひクルマを持ってもらって長く楽しんでほしい。そのために今回はゼロ円で、とりあえず1年間提供してみようと思う」と無料開催の狙いを語る。もし参加に興味があれば、「大人の自動車教習所2.0」のHPで申し込み方法や日程を調べてみてほしい。ちなみに募集は21~33歳限定だ。
【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら