ドライバーの意図を電子処理
アクセルオンで旋回中、フロントの駆動が横グリップに勝り、強いパワーアンダーステアに陥ったとする。その場合、フロントの駆動トルクを抑えて、リア駆動力を高める。前後トルクの移動は、ステアリング舵角とヨーレートセンサーで読み取る。つまり、ドライバーがハンドルを切り込むことでもっと曲がりたいとコンピューターが判断すると、旋回性を高めてくれるのだ。
散水したスリッピーなテストコースで旋回中、フロントタイヤがスキール音を上げ始めた付近でトルクバランスがリアに移動し、スムーズな旋回姿勢に移行した。ワインディングを攻め立てるような激しい場面ではなく、雨の日の交差点など、日常の穏やかなシチュエーションでも有用なような気がした。
そこで感じたのは、日産GT-Rの走りの肝である「アテーサE-TS」に酷似している点である。GT-Rの基本はFR駆動である。フロントに搭載したエンジンからのビックトルクをリアタイヤに伝達する。そこで横グリップを越えると、一部をフロントに伝えることでテールスライドを抑える。同時に強くトラクション性能を発揮するのだ。それがGT-Rが世界トップクラスの速さを得た肝である。その考え方を、フロント駆動EVに応用したのだ。
このところのEV化によって、駆動トルクを4輪に適切に配分し易くなった、そのメリットを活かし、操縦安定性を高める技術は今後益々増えると思う。あの「アテーサE-TS」をEVに搭載する日がくるとは思わなかった。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。