令和となって初のNHK紅白歌合戦が昨年12月31日、東京・渋谷のNHKホールで開催された。東京五輪・パラリンピックの「2020年」を意識し、五輪代表内定選手らが盛り上げに一役買ったが、一昨年末の「平成最後の紅白」が、良くも悪くもアクの強いものだっただけに、淡泊な印象に。第2部の視聴率は過去最低と、厳しい結果になった。(兼松康、石井那納子)
オリパラ・ラグビー・米津さん
今回の紅白、特に終盤に連続した「風が吹いている」(いきものがかり)、「栄光の架橋」を含むメドレー(ゆず)、初披露された「NHK2020ソング」の「カイト」(嵐)は、東京五輪・パラリンピックを強く想起させた。続いて、松任谷由実さんの「ノーサイド」。ステージに並んだラグビーの日本代表選手を涙させ、名曲であることを改めて知らしめた。過去の五輪や昨年のラグビーワールドカップの映像などが流され、音楽の持つ力をより増幅させる演出だった。
レコード大賞を獲得した「Foorin」(フーリン)は、その人気が世代を超えたのに続き、国境をも越えようと英語版も含めた「紅白スペシャルバージョン」で「パプリカ」を歌った。「オフィシャル髭男ディズム」や「King Gnu」のフレッシュさも会場をわかせ、「紅蓮華」を歌ったLiSAさんは、「終わったあとは大号泣。本当に紅白に出たんだ」と感激の様子だった。
今回は歌手としての出場はなかった米津玄師さんだが、「パプリカ」や「カイト」に加え、初出場の菅田将暉さんの「まちがいさがし」の作詞作曲者として大きな存在感を発揮。嵐が「カイト」を歌唱する前にVTRで登場し、「今の自分は誰かに生かされている。日々を漫然と生きているとそういうことを忘れがちになるが、自分を戒める気持ちで作った」などとコメントし、視聴者に強い印象を残した。
「冷たさ」と新たな時代と
一方で、YOSHIKIさんと米ロックバンド「KISS」のコラボ「YOSHIKISS」が事前収録だったことや、どことなく冷たさが感じられた「AI美空ひばり」の企画、別スタジオからの中継となった竹内まりやさんなどは、さまざまな都合もあろうが、会場との一体感に欠け、やや残念に感じられた。
年末で帰省し、普段の家族よりも多い人数で見るイメージも強い紅白歌合戦。平成最後の紅白歌合戦(第69回)が「サザンオールスターズ」の熱唱で強い一体感を打ち出したこともあり、今回は良くも悪くもさらりとした印象が残った。紅組のトリを務めたMISIAさんのステージで、LGBTの社会運動を象徴するレインボーフラッグが振られたように、新たな時代にふさわしい紅白のあり方もあるだろう。それと同時に、年末のお祭りイベントには、さまざまな場がまとまる「一体感」が不可欠の要素なのかもしれない。
「紅白歌合戦」の第2部(午後9時~11時45分)の視聴率は、2部制となった平成元年以降で、平成27年の第2部(39・2%)を下回る、過去最低の37・3%だった。
瞬間最高視聴率は第2部の午後11時41分で、42・3%。出場歌手らの歌唱シーンのダイジェストが流れている時間だった。
一方、民放の裏番組では、日本テレビの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日(おおみそか)年越しSP」がトップ。第1部(午後6時半~9時)16・2%、第2部(同9時~深夜0時半)14・6%と、これで10年連続で紅白の裏番組の民放トップとなった。
日テレと視聴率争いを続けるテレビ朝日は「ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会」で、午後7時からの3時間が8・2%で、民放2位となった。