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「脱ぎ着のしやすさ」優先されて後回し 障害あっても“おしゃれ”に

 障害のある人の服選びは、「脱ぎ着のしやすさ」が優先され、おしゃれが後回しになることがある。冬ならコートをおしゃれに着たい。そんな服にまつわる望みや困りごとを共有し、悩みを解決するアイデアを出し合いながら、誰もが理解しあえる共生社会につなげる取り組み「みなとコオフク塾」が東京都内で開かれた。(津川綾子)

 コート題材に

  主催した任意団体「コオフク」のプリンシパル(代表)、西村佳子さんは元アパレル会社員。車いすの人たちが「車いすでもおしゃれをしたい」と話すのを聞き、障害のある人がおしゃれに「壁」を感じていることに気づいた。誰でもおしゃれを楽しめて、違いを認め合える社会を目指そうと、平成28年、「コオフク」を立ち上げた。

 その名には、幸福や服を考える(考服)、共同や相互を意味する英語「CO」などがかけ合わされている。これまで、アパレル企業などの協力を得て、連続ワークショップ形式のコオフク塾を7回開催。パタンナーやディレクターなど服作りのプロと、公募の一般参加者、障害のある人らがチームとなり、2~4カ月かけて服にまつわる困りごとを理解し、みんなで解決策を考えて、既製服のリデザインなどをしてきた。

 昨年9月からアパレル大手「ワールド」で開かれた「みなとコオフク塾」には約50人が参加。「コート」を題材に、参加者らが着こなしの困りごとなどを話し合った。

 その1人、脳性まひにより介助を受けながら電動車いすで暮らす東京都内の会社員、篠田翔太郎さんは、服はいつも「着替えやすさ」が優先で、「高校時代、同級生がストリートファッションでおしゃれを楽しむのをうらやましく思っていた」という。

 機能だけでなく

 コートの場合、車いすだと、厚地の布が体の周りでだぶついたり、長いと裾が車輪に絡まる恐れもあって気に入っても着られないことがあった。

 篠田さんが参加したチームでは、メンバーが「機能だけを追求した介護服にはしたくない」「障害のあるなしに関わらずおしゃれができるデザインに」などと話し合いを重ねた。

 その結果、流行のチェック柄のチェスターコートの両脇、両袖をファスナーで開閉できるように。車いすでも羽織りやすく、前身頃が膝の上にすとんと重なり、おしゃれに着こなせて、暖かい。篠田さんのアイデアも取り入れ、まくし上げた後ろ身頃は頭上に被(かぶ)るフードや飾り襟などに変形できるようにした。健常者が普通に着ても、脇のファスナーがデザインのアクセントになる。

 チームの一員、東京都渋谷区の東雲かやのさんは、「障害がある人それぞれの困りごとについて、これまで想像が及ばなかったことに気づくことができた」と話す。篠田さんも、「僕に着せたり脱がせたりしてくれた人は肩とひじがひっかかる不便さを、僕以上に感じたのでは」。コオフク塾は、障害の有無を超え、互いに気づかなかった事情や思いを知る機会となった。

 「コオフク」の西村さんは、この取り組みを通じ、「いつか『バリアフリー』という言葉自体が不要な社会になれば」と話した。

 制作したコートは2月1日から、ワールド北青山ビル(東京都港区)で展示する。

 裾上げ感覚で着たいものを

  アパレル大手「三陽商会」でも「シンコオフクジュク」を開催した。車いすの男性が「かっこいい、着たい!」と選んだ短パンは、母親がけがや冷えを心配し、これまであまり購入したことがなかったという。

 そこで、短パンに伸縮性のある生地を足し、重ね着に見えるように工夫。心配事を解消しながらおしゃれを楽しめるようにした。

 運営担当で、車いすの男性と活動した同社技術開発課長、西岡宏和さんは「ズボンの裾上げをするような感覚で、(障害の特性に関わらず)着たいものが着られるようになることがあると分かった。アイデアを共有し、どんな人もおしゃれを楽しめる社会になれば」と話している。

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