担当者は「サーキットで過激に追い込まれると…」
実際にはサーキットを攻めこむと、滲み出るようなスポーツ性能に驚かされる。足元は徹底したエコタイヤを履いていた。だからサーキットなどは荷が重いのだろうと心配もしていた。サーキット試乗になったのは、まだ世間に公表できないプロトタイプゆえに、本来ならば公道試乗が適切なはずのヤリスをクローズドに持ち込んだのには無理があるのだと。実際には担当者は、こういって頭をかいた。「サーキット仕様ではありません。過激に追い込まれると…」。限界域で評価されることを嫌っていた。
だが、それは杞憂に終わった。たしかにサーキットに放り込まれると、意図せずにペースは上がっていく。それが人の性だ。いつしか、タイヤから悲鳴が上がる速度域に達してしまっていたのも許していただきたい。だがそれがかえってTNGAの完成度を知ることになった。
タイヤのグリップ性能はたしかに低いけれど、かといって走りが鈍重かといえば答えは否だ。もちろん目の覚めるようなラップタイムを叩き出すはずもない。だが、限界域でも自由自在にコントロールできるし、ボディが激しく傾いても不安感がないのだ。
狙ったラインをトレースすることが可能だ。無駄なピッチングやロールの揺り戻しもない。路面からのショックを巧みに吸収する。この、なかなかできない当たり前のことをさらりとやってのける最大の功労者はTNGAではないかと思うのである。
ユーザーにとってプラットフォームが新しくなろうが、それがTNGAと呼ばれようがどうだろうが、余り関心がないに違いない。同感である。だが、プラットフォームが与える影響は無視できないことも事実。TNGAがそれを雄弁に語った。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。