ヘルスケア

「クルーズ船と同じこと、高齢者施設で起こり得る」乗船支援した和田耕治教授

 新型コロナウイルスの集団感染が発生した大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、全乗船者の2割弱にあたる705人が感染し、うち6人が死亡した(1日時点)。厚生労働省の要請で乗船して支援に当たった国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)に今後の教訓について聞いた。

 --船内で10人の感染が確認された2月5日から乗客は14日間の個室待機になった。船内で感染が広がったのはいつか

 「大部分の感染は検疫の始まった2月5日よりも前に起きたと考えられる。その数日前までは濃厚接触の恐れがある多くの方が参加する社交的な集まりが連日、催されており広がったようだ。当初は感染者が少なかったが、7日に41人の陽性が確認されて以降、危機感が高まった」

 --どうして感染が広まったのか

 「主には接触感染と飛沫(ひまつ)感染で広がったと考えられる。国内の他の場所での感染拡大状況もあわせてみると、密閉された空間で換気が少なく、対面で一定の時間会話があり、知人といった関係性でお互いの距離が近いという状況があった。クルーズ船の乗客は高齢者の割合が高く、狭いため手すりなどさまざまな場所に触れて広がった可能性がある」

 --新型コロナウイルスの性質は

 「船内の感染状況から分かったことは、感染者の約半数が無症状といえる状況だ。しかし、約3割に発熱などの症状が出る。残る約2割が重症化した。さらに全体の約5%の患者は人工呼吸器を必要とするほど重篤な状況になった。高齢とはいえ、海外旅行に行ける元気な人でも重症化している」

 「クルーズ船で起きたことが今後、国内の高齢者施設で起こる可能性がある。施設内では一気に広がるリスクがあり、広がった場合、仮に100人感染したら約50人が発熱などの症状を呈し、施設での滞在が困難となり、その多くは入院する可能性がある。さらに5人は人工呼吸器が必要な重症となり死亡する恐れもある。担当する医療機関にとっては大きな負担になり、通常の医療が提供できなくなる」

 「現状、国内では一部地域で集団感染(クラスター)が発生している。地域において感染が広がれば、次第に若い人から重症化のリスクが高い高齢者へと広がり、さらには高齢者施設での集団感染も想定される」

 --今、大切なことは

 「健康な無症状の人からうつるところが新型コロナウイルス対策の難しいところだ。このようなウイルスはあまり例がない。国民一人一人が自覚を持って感染予防に取り組むことが重要だ。しかしながら、こうした状況は今後、年単位で続く可能性を想定した覚悟が必要である。多くの対策は、人々の関係を分断させることにもつながりかねない。団結して、恐る恐るでも日常を過ごせるように心がけたい」(長嶋雅子)

 わだ・こうじ 昭和50年、北九州市出身。平成12年、産業医科大医学部卒。24年、北里大医学部公衆衛生学准教授、25年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師などを経て30年より現職。専門は公衆衛生、産業保健、健康危機管理。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus