本稿は、国公立大学入試(前期日程)の初日、2月25日(連休明けの火曜日)に執筆を始めたのだが、折も折、新型コロナウイルス発症者が世界各国で急激に増え始め、日経平均が暴落に見舞われた日である。
前期日程に関しては、受験生への直截の影響は辛うじて回避できたようだが、3月12日が初日となる後期日程に関しては、まだまだ予断を許さない状況である。
私立中学の入試問題の出題傾向に変化が?
翻って、中学受験については一段落してから3週間ほどが経過しており、その入試問題については、各塾での傾向分析がひととおり終わった頃である。
難関私立中学(大学附属を除く中高一貫校)の入試問題にざっと目を通してみて感じたことの一つは、「都立高校附属中学(中高一貫校)の適性検査Ⅱ・Ⅲで出題されるような問題を出してくる中学校が増えたな」である。
やや乱暴に言ってしまえば、知識・処理能力重視から思考(分析・推論)力重視へのシフトが感じられる中学校がちらほら見受けられた。言い換えれば、習ったことのある(知っている)数ある解法のどれに当て嵌めればよいかを判断して解くようなパターン適用型から、習っていないことをその場で解き方から考えなければならない試行錯誤型への転換姿勢が感じられた中学校が散見された。
もちろん、従来からの思考力重視を貫いている中学校もあれば、数の上では今までどおりの知識・処理能力重視の中学校のほうが多い。同時に、このシフトは最上位クラスの男子校に目立つ傾向のようにも感じられた。
入試に変化をもたらす「高大接続改革」とは
背景に何があるのかと言えば、当然「大学入試改革」であろう。受験生の親とすれば、「入試が変わる」という点にばかり目が向きがちだが、事の本質は「入試改革」にあるのではなく「高大接続改革」にある。これは文部科学省の諮問機関である中央教育審議会が2014年12月に答申したものである。
高大接続とは、なるべく短くまとめると、高校・大学入試・大学の3つが一体となった教育改革のことであり、「生きる力」を育むことを最大の目的としている。生きる力とは、人口が急激に減少し、グローバル化や技術革新が進んだ「変化の激しい社会で生きる子どもたちに身につけさせるべき力」とされ、「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」の3要素で構成されている。
答申は、各大学が個別に行う入学者選抜の目的を、入学志願者が高校教育までに身に付けた「生きる力」とその要素の一つである「確かな学力」をいかに大学教育で発展・向上させ学生を社会へ送り出していくか、そのために大学の入り口段階でどのような力が求められるか、これを多面的・総合的に評価する、と定めている。