ヘルスケア

患者集団「クラスター」対策 ライブハウスなど自粛ムードに不安

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「クラスター」と呼ばれる患者集団をめぐる対策が急務だ。政府の専門家会議は重症化リスクの低い若者から広がっている可能性を指摘し、避ける場所としてライブハウスやスポーツジムなどを列挙した。名指しされた形の施設側は営業の制限や公演の延期を余儀なくされ、先の見えない“自粛モード”に不安と不満を募らせている。

 首都圏で「ALL」などのカラオケ店を展開する「メロ・ワークス」(さいたま市)では、小中高校の一斉休校が始まった2日から13日まで、高校生以下に対し入店自粛を要請している。担当者は「今後、国の対応がどうなっていくかで自粛要請期間の延長を考える。カラオケが大々的に名指しされ、歓送迎会やシニア層のキャンセルが相次いでおり、かなり厳しい」と窮状を訴える。

 政府の専門家会議は2日、感染者の8割は他の人にうつさないとする一方で、症状の軽い一部の人が外に出て、多数のクラスターを形成すると感染拡大が止められなくなると指摘。感染拡大の条件を満たす場所としてライブハウスやスポーツジム、屋形船、マージャン店などを挙げ、カラオケボックスについても「風通しの悪く人が集まる場所」として、できるだけ行かないよう呼びかけた。

 スポーツジムでは、千葉県市川市や名古屋市でクラスターが発生したとみられる。全国のスポーツジムが加盟する「日本フィットネス産業協会」(東京)は「新型コロナウイルス対応ガイドライン」を策定し、消毒の徹底やスタッフのマスク着用、マシンの間隔を広げることなどを会員企業に求めている。全国展開する「ゴールドジム」では、15日まで子供を対象としたジュニアスクールやスイミングスクールを休止、スタジオプログラムの参加人数も制限している。利用者は3割程度減少したという。

 東京都江東区のライブホール「Zepp Tokyo」では、12日までのライブは全て中止や延期、無観客開催とした。支配人は「主催者側はひとまず2週間をめどに判断しているが、それ以降でも中止や延期にしているライブも数件ある」と話した。

 アーティスト側も対応に苦慮している。人気歌手の椎名林檎さんが所属するグループ「東京事変」は、政府がイベントの自粛を求めた後の2月29日と今月1日にライブを行ったが、6日以降の5公演を中止すると発表。無観客ライブをYouTubeで配信するなどして話題となったバンドもいる。

 回避すべき対象とされなかった映画館でも、岩波ホール(千代田区)や早稲田松竹(新宿区)では13日まで臨時休館とした。

 政府による施設の「選別」を疑問視する声も上がる。渋谷区で20年以上、マージャン店を経営する70代の女性は「今週から予約のキャンセルが相次いで困っている。マージャン店やカラオケ店がだめで、なぜ、もっと人が集まるパチンコ店や満員電車は大丈夫なのか。一体、いつまで続くのか」と不満を口にした。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus