ただし、これらを実現するためには、もちろんネット販売では不可能。売り手と買い手とが顔をつきあわせる対面商売が基本となる。単なる移動手段として購入した場合にはその限りではないかもしれないが、趣味性、嗜好性の高いモデルになるほど、人と人とのコミュニケーションが大切で、売り手には高度なスキルが求められるというわけだ。
同様のキャリアを持つ業界人はいない
著者は、大学卒業後ヤナセに入社し、芝浦本社でメルセデス・ベンツの販売を担当。そこで富裕層や大企業との取り引きを身につけたという。ちょうどバブル景気を挟んでその前後に在籍をしていたようだから、ヤナセ本社でメルセデスの営業、バブル最盛期…となれば、どんな顧客層を相手にしてきたのだろうかと、想像するだけでワクワクする。
しかし、その後著者は、自動車専門のメディアに転身し、編集者やライターとして業界ナンバーワン誌の副編集長まで登り詰める。そしてさらに、セールスコンサルタントとして独立起業をし現在に至っている。
著者が現在活動の中心においている自動車専門のコンサルタント業を営むにあたり、自動車の販売経験、自動車専門誌の編集経験がモノをいっている。つまり、売り手と買い手の立場を熟知し、かつメディアという第三者の目で自動車業界に対する視点を持つというわけで、僕の知る限り同様のキャリアを持つ自動車業界人はいない。現在の活動においても、自動車メーカーや自動車販売会社だけにとどまらず、一般企業からの講演や研修を依頼され、競合のないポジションを確立していると聞く。そんな経験に基づいた書籍の内容は、しごく当たり前のことが書かれているにもかかわらず、いちいち「なるほど、そうだよな…」と頷いてしまう。
テスラでの体験とこの本との出会いは、まさにタイムリーな出来事。まもなくテスラからは、配車の順番が回ってきたという連絡がくるだろう…たぶん。その後は、どんなプロセスをたどるのだろうか? 登録関係書類はどのように回収するのか? 納車は? モチベーションが大いに下がっていたテスラだが、そんなことを考えているうちに、またワクワクしてきた。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。