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ほぼ都市伝説の「深海魚は地震の前兆」なぜ信じる 研究の結果は…

 福井県越前町の漁港で2月15日、深海魚のリュウグウノツカイが見つかった。2匹そろって、ゆったりと海中を漂う姿が撮影され、公開されると、インターネット上では驚きの声が上がる一方、「大きな地震の前触れでは」と懸念する書き込みもあった。珍しい深海魚の出現が地震と関連があるのだろうか。

 世界的にも珍しい映像

 発見されたリュウグウノツカイ2匹は、いずれも全長5メートルほど。愛知県春日井市から漁港を訪れた田平浩司さん、琴女(ことめ)さん夫妻が撮影し、越前松島水族館(福井県坂井市)に画像や映像を提供した。同水族館の鈴木隆史館長は「2匹が並んで泳ぐ姿は世界的にも珍しい貴重な映像だ」とする。

 別の目撃者もツイッターに動画を公開。ニュースにも取り上げられ、SNSでは神秘的な光景に投稿が相次いだが、同時に多かったのが「地震とか自然災害が起こらなけりゃいいけど…」「地震にも気をつけないと」などと心配する声だった。

 実は、深海魚の出現と地震の関連を調べた調査がある。東海大と静岡県立大の共同チームが、深海魚の出現事例を収集し、地震の発生状況を調べた論文を昨年、発表した。

 チームは、リュウグウノツカイを含め「地震の前兆」という伝承がある深海魚8種をピックアップ。昭和3年から平成23年3月までの漂着、捕獲事例336件を確認した上で、その出現場所から半径100キロメートルの範囲について、30日以内にマグニチュード(M)6・0以上の地震の発生が起きていないかどうかを調べたのだ。

 「錯誤相関」

 ところで、人はなぜ、深海魚の出現が大きな地震と関係があるように感じるのだろうか。

 信州大地域防災減災センター長の菊池聡(さとる)教授(認知心理学)は「錯誤相関」という言葉を教えてくれた。

 《地震が起きた後で、地震より前に珍しい深海魚の出現などの不思議な現象を探せば、いくつか見つかるもの。その現象があったから地震が起きたとは限らないが、その現象と地震が関係すると思うことが「錯誤相関」と呼ばれる》

 菊池教授は「不思議な現象の後に地震が起きれば関係があると感じ、なければ現象のことを忘れる。この忘れてしまうことが、前兆と感じることを強めている」と指摘する。

 一方、「不思議な現象を前兆だと結びつけることは、自然な考え方。あながち間違ったものではない」とも。天体観測を通じてナイル川が氾濫する時期を割り出した古代エジプト文明を引き合いに、「人間は自然の中から因果関係を見つけ出し、知恵を身に付けてきた」という。

 研究の結果は…

 さて、東海大と静岡県立大の共同チームの結果だが、深海魚の出現と地震の発生の条件に該当したのは、平成19年7月16日の新潟県中越沖地震の1件だけ。論文では「深海魚の出現は地震の前触れ」とする伝承は迷信と考えられると結論付けられた。

 研究をまとめた東海大海洋研究所の織原義明特任准教授は「本当に地震前にみられる現象ならば、事前避難など防災に役立つ情報になりえる」との狙いをもって調査を進めていたが、「言い伝えは必ずしも真とは限らない」との結果になった。

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