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企業は積極公表、自治体は?新型コロナの感染者情報錯綜

 新型コロナウイルス感染者の情報が錯綜(さくそう)している。自治体には注意喚起に必要な情報発信が求められる半面、個人の特定や風評被害回避のため、保護にも配慮する必要がある。一方、企業や団体が明らかにした感染者が自治体発表のどの感染者かわからないケースもあり、統一的な基準がないことで混乱が広がっている。

 「公表すべきだと判断すれば、同意を得て公表している。全ての企業名を、というのは行き過ぎだ」。大阪府の吉村洋文知事は9日、感染者に関する情報発信について、記者団にこう説明した。

 府は6日に発表した感染者13人のうち、吹田市の50代女性については当初、別の感染者が受診した「医療機関の医療従事者」としていた。翌7日、女性が非常勤看護師として勤務する国立循環器病研究センター(国循)が感染者の発生を自主公表すると、同日夜に同様の内容を発表した。

 府では、重症化リスクの高い人と接した可能性がある医療機関の感染者は「医療従事者」と説明。濃厚接触者を把握しきれず、集団感染の恐れがある場合に、同意を得て具体的な職種を公表しているという。

 府の担当者は国循のケースに関し「本来は基準に該当しない」とし、公表の理由を「大規模な医療機関で、非常勤看護師が産婦人科外来に勤務しており、社会的影響が大きいと判断した」と語った。

 一方、大阪府松原市のある医院は5日、来院患者の感染が確認されたとして当面の外来診療を休止。だが府は「濃厚接触者を特定し、集団感染の恐れはない」として、この患者が府の発表分に含まれるか明らかにしていない。管轄する藤井寺保健所も「府の公表内容以外は答えられない」。

 慎重な自治体側と対照的に、積極的に公表する企業もある。

 小売り最大手のイオンは4日、大阪府茨木市内の2店舗で派遣従業員の感染が確認されたとホームページ(HP)で発表。同社によると従業員に症状はなく、客や同僚への感染の可能性は低いという。担当者は「風評被害を払拭し、安心していただくため公表した」と話す。

 この感染者について、府はHPにイオンの公表内容を掲載したが、それ以上の説明はない。HPで公開している府内の感染者リストを見ても誰が該当するか不明だ。府やイオンから茨木市に連絡はないといい、市の関係者は「市民に聞かれても詳細は分からないとしかいえない」と戸惑いを隠さない。

 日本大学危機管理学部の福田充教授は「自治体は個人情報に配慮し、住民に必要な情報を部分的に出す。企業や団体は信頼獲得や組織の社会的責任を重視し、進んで説明するという立場の違いがある」と指摘。その上で「企業発の情報で詳細が明らかになることもあるが、今後も感染者が増えた場合、企業が個別に出す情報の意義は薄らぐのではないか」との見方を示した。

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