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卓球はクラスターを発生しやすいのか? リスク生みやすい環境は他にも

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、新潟市では卓球教室で男女5人の陽性が確認される「クラスター」(小規模な感染集団)が発生した。感染症に詳しい新潟大の斎藤玲子教授(公衆衛生学)は「卓球の会場は換気が悪く、ボールや卓球台を介してウイルスが感染しやすい」と指摘するが、卓球界は「ほかのスポーツでも同じではないか」などと反論している。卓球は感染しやすいのか。スポーツによる感染を防ぐにはどうしたらいいのか-。(池田証志)

■飛沫感染と接触感染

 「飛沫(ひまつ)感染と接触感染が合わさった」。新潟市保健所感染症診査協議会の委員を務める斎藤教授は6日、同市役所で開かれた対策会議で、卓球教室でクラスターが起きた理由をこう説明した。

 同市では2月29日、東京から市内に帰省中の60代無職男性が陽性と確認され、その後、この男性が参加していた市内の卓球教室参加者4人の感染が判明。さらにこのうちの1人から卓球大会などを通じて2人に感染が拡大した。斎藤教授はこの卓球教室で飛沫感染と接触感染によってクラスターが発生した可能性が高いとみている。

■卓球の環境

 斎藤教授は大学時代に卓球部に所属した経験を基に、卓球というスポーツで生じやすいクラスター環境を次のように説明する。

 卓球は、風がボールのコースを変えるのを防ぐため窓を閉めた体育館などの密閉空間で行われる。プレーヤーは運動による激しい呼気やプレーに伴う発声で飛散したウイルスを摂取しやすく、ダブルスや練習ではプレーヤー同士の距離がさらに近く、顔を近づけて作戦を相談する場面もあり、飛沫感染が起きやすいという。

 加えて、接触感染のリスクを指摘。「顔の汗はウイルスが含まれる鼻水や唾液と混ざりやすい。顔の汗を拭いたタオルで手を拭き、さらにサーブで触ったボールに他のプレーヤーが触れると、接触感染が起こる可能性がある」という。卓球のボールはプラスチック製でツルツルしているので接触面が大きく、ウイルスが手に付着しやすい。ウイルスが付いた手で目や口の付近を触ると、接触感染につながる。

 また、卓球台の上に落ちた汗はボールのコースを変えることがあるため、プレーヤーが手で拭うことがある。ゲームの後には握手をするが、いずれも接触感染源となりうるという。

■他のスポーツも

 卓球がことさら注目されたことに反論するのは、新潟市卓球連盟の和田良夫副会長。「地方大会やゲーム形式の練習ではボールを1つしか使わない場合が多いが、最近はマシンで100個以上のボール使って練習する。ボールを拾う網もあり、練習でプレーヤーがボールに触れる機会は減っている。プレーヤー間の距離の近さや握手はほかのスポーツでもある」と卓球だけが注目されていることに首をかしげる。

 斎藤教授は、卓球以外のスポーツについてもリスクを指摘する。「卓球だからといって過度にクラスターの心配をすることはない。他の屋内スポーツでも感染しやすい」という。

 屋内のスポーツクラブも不特定多数の人が次から次へと来るので要注意。逆に、屋外スポーツは一般的にリスクが比較的に低くなるが、身体接触が多いスポーツは気をつけた方がいいという。

 実際、市内の別の体育館で、卓球以外のスポーツをしていた男女からも陽性者が出たことで、卓球だけでなくスポーツによる感染の危険性が改めて浮き彫りになった。

 斎藤教授は、卓球をする際に感染リスクを下げるポイントとして、会場のドアノブやトイレ周り、床の消毒といった通常の配慮のほか、練習や試合の合間の換気、ボールや卓球台のアルコール消毒などを挙げる。これらの対策はほかのスポーツにもいえる。

 新潟市卓球連盟は公式ホームページで「十分な予防と健康管理の徹底をお願いします」と呼び掛けている。

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