ヘルスケア

少人数の飲み会も「ダメ」 爆発的急増懸念の背景に「夜の繁華街」 

 東京都が新型コロナウイルスについて「オーバーシュート(爆発的患者急増)を防ぐ重大局面」として不要不急の外出自粛要請に踏み切った背景には、感染者数の急激な伸びと、その感染状況がある。目立ち始めた感染経路不明のケースに対する行動歴調査で「夜の繁華街の飲食店」が共通項として浮上。感染の場になった疑いもあるとみて繁華街経由の感染拡大リスクの回避が必要と判断した。小池百合子知事は都市封鎖の可能性に言及して協力を呼びかけ、首都圏の他県も自粛要請で歩調を合わせた。

 経路不明が急増

 都内で確認された感染は3月に入ってから急増するようになった。23日16人、24日17人と続き、25日に一気に41人に膨れ上がった。欧州など流行国から帰国した人の感染判明が増えていることに加え、過去の感染判明分と接点がみられない感染経路不明のケースが25日だけで13人に達した。東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「感染経路をたどれないということは背景にどれだけ感染者がいるか分からず、さらに拡大する可能性があることを意味する」と指摘する。

 都関係者によると、感染経路不明のケースで行動歴を調査する中で、感染場所とは断定できないものの、一定数の感染者の中で夜の繁華街の飲食店で食事していることが共通項として浮上。大人数の宴会だけでなく、少人数の会食も含まれ、都は繁華街を経由して感染が一気に拡大し、爆発的患者急増につながる懸念が高まったと判断した。

 都が感染封じ込めのカギとみるのは若者対策だ。症状が軽症にとどまり、発見が困難な若年層が無自覚のうちに感染を広げ、高齢者らの重症化を招くことを懸念。新年度が始まれば、入社、入学のために多くの若者が都内に入り、宴会などの動きが活発になることも想定される。小池知事は「若い人の行動が感染を防ぐ」と繰り返し強調する。

 都はこれまで(1)換気の悪い密閉空間(2)多くの人が密集する場所(3)近距離での密接した会話-の3条件を避けるよう求めてきたが、25日の記者会見では「屋外、屋内問わずイベントなどへの参加」「少人数でも飲食を伴う集まり」も例示して控えるよう呼びかけた。

 首都封鎖起きるか

 都内で爆発的患者急増が起きた場合、通勤・通学で多数の往来がある首都圏に波及する懸念があり、首都圏各県でも不要不急の外出自粛要請や、都内への移動自粛が出された。街頭では「不要不急の定義が分からない」との戸惑いの声も上がるが、都の担当幹部の1人は「業種や業務などでそれぞれの事情があるので、具体的に線引きすることが難しい」と漏らす。

 要請の実効性は未知数といえ、小池知事は26日、報道陣に対して「国からもメッセージをしっかりと出していただければ、皆さんが引き受けていただける環境づくりにプラスになる。国の方でも検討いただきたい」と強調した。

 国が改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、都を対象に緊急事態宣言を発令すれば、都は国の対処方針を踏まえて具体的な措置、都内の対象地域を発表することになる。

 同法には臨時医療施設開設のための土地・建物使用や、医薬品・食料の売り渡し要請などが権限として明記されている。

 小池知事は海外で行われている都市封鎖(ロックダウン)に言及しているが、都関係者は「現時点では特措法の権限で対策を講じていくことが想定されている。海外のような公共交通機関の停止、道路の封鎖などはできないのではないか」との見方を示した。

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