ヘルスケア

「コロナになったら死んじゃうの?」 “置き去り”にされる子供たち

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための臨時休校は、子供たちの日常も一変させた。感染者数は日ごとに増え続けており、大人でも先行きが見通せない中、ニュースを聞きかじった子供たちの中には「自分も病気になって死んでしまうのでは」といった恐怖を抱くケースも。親が感染拡大地域に通勤しているといった理由で仲間はずれにされるなどの問題も起こっており、大人たちの適切な対応が求められている。

 「(自分や知人が)コロナにかからないか心配」「日本が大変なことになっていてこわい」

 公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が3月17~22日にインターネットなどで実施したアンケート。小学生を中心に大学1年生まで961件の回答が寄せられ、自由記述には、不安を訴える声が切々とつづられていた。

 寄せられた困り事は「外出できない」が最も多く、「人と会いたい」「体調・感染拡大への心配」と続いた。また、「コロナはどこからきたのか教えてほしい」(小1~小3)、「色々なニュースがあり正しいことがわかりにくい」(小5)といった訴えもあり、子供に正しい情報が伝わっていない実態も浮かび上がった。

 同法人は「今回の休校決定は突然すぎて子供たちは置き去りにされていると感じている」として、子供にとってわかりやすい情報発信を求めている。

 国連児童基金(ユニセフ)と国際赤十字・赤新月社連盟、世界保健機関(WHO)は3月上旬、「新型コロナウイルスの感染から子供と学校を守るための新しい行動指針」を発表。子供に対しては、「いつもと違う状況下で悲しみや不安を感じるのは当然のこと」と呼びかけ、危機を乗り切るポイントとして、親や教員など信頼できる人との会話や正しい情報を得ることをあげた。誰にでも感染の危険性があり、「非難したりいじめたりしてはいけない」ともした。

 また、保護者に対しては、正しい情報を確かな情報源から得るよう注意喚起。子供の心配事に「耳を傾け、慰め、たくさん褒める」ことや、年齢に応じた情報を与え、今何が起きているのか、自分の身を守るために何ができるのかを伝えるよう求めた。

 大阪府臨床心理士会の良原恵子副会長(61)は保護者に対し、「こんな時こそいつも通りの接し方を心掛けて。大人がいつもと違う様子を出せば子供には伝わる」と訴える。「日常の何げない雑談やちょっとした声掛け、うなずくだけでも子供は安心する」といい、学校関係者に対しても「子供にとって見慣れた顔は安心感が増す。先生が様子を見に行くのも効果的」としている。

 「私もコロナになったら死んじゃうの?」。小学3年になる大阪市の女児(8)は3月以降、母親(35)にたびたびこう問いかけるようになった。

 自ら手指の消毒を何度も行うなど感染予防をしているが、不安をぬぐい切れない。ファンだったタレントの志村けんさんの訃報は恐怖に追い打ちをかけたといい、母親は「娘は大好きな人の命をも奪う怖い病気だと感じており、どうすれば不安を和らげてやれるのか」と悩む。単身赴任中の父親(36)が帰宅しようとした際も「新幹線でコロナに感染するのでは」と怖がったため、帰宅を取りやめたという。

 新型コロナウイルスへの感染を理不尽に疑われ、友達から遊んでもらえないといった悩みを抱える子もいる。神戸市の主婦(45)は、花粉症の三男(11)が「コロナ感染者扱いされている」と憤る。いつも外で走り回っている三男は3月に入ってから花粉症によるくしゃみやせきが出始めると、家にこもりがちに。「遊びに行かないの?」と聞くと、「『おまえコロナやろ』と言われるから、行かない」と涙をこぼしたという。

 父親が感染拡大地域で働くなどの理由で子供が不安を募らせるケースもある。奈良県の自営業の女性(40)は、長男(10)から「お父さんはコロナなの?」と尋ねられた。会社員の夫(39)は元気だが、職場が大阪だという理由で、友達に「(ウイルスを)もらってくるぞ」と言われたという。

 神奈川県では、父親(56)が3月に米国出張から帰国して以来、長女(10)が友達に遊んでもらえなくなったケースも。母親(46)は「親として、わが子が感染したら怖い、という気持ちは分かる。でも、まるで感染者のように扱われてショックだった」と訴えた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus