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高齢者は「なるべく歩いて」 外出自粛で生活不活発化の恐れ

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、不要不急の場合は自粛を求められていることから、外出を控える動きが広がっている。ところが高齢者の場合、家でじっとすることが別のリスクを招くこともあるという。高齢者医療の専門家らは、「なるべく動いて」と注意を促す。(津川綾子)

 おばあちゃんの原宿と呼ばれる東京・巣鴨。巣鴨地蔵通り商店街に海苔(のり)店を構える矢崎晴久さん(76)は、「例年よりも5割ほど人出が減ったね」と、外出控えの実感を漏らす。通りを歩いていた東京都北区の女性(85)も、「万が一、うつっちゃうといけないから買い物を週に2回から1回に減らした。歩かなきゃとは思うけれど…習い事も軒並みお休みになったし、前より外に出なくなったわね」と言った。

 さらに、外出機会の減少は、介護サービスを受けている人たちにも及んでいる、という。

 名古屋や千葉・市川などで新型コロナウイルスの感染が報じられたこともあり、デイサービスなど通所型の介護施設では「通い控え」が生じているという。

 「2月後半以降、通所者が3~4割減った」と話すのは、デイサービスリハステージ上新庄(大阪)の職員、新原航季さん(28)。「家族に止められている人もいれば、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が感染を恐れて、居住者の外出を禁止したため、通えなくなった人もいる」という。来所時には3時間の運動(機能訓練)を行っていた高齢者が、外出や訓練ができなくなる。「お休みの間、部屋から出ないで過ごす人もいるかもしれない。体が弱ってしまわないか。代替策を考えなければ」と心配している。

 それまで外出していた高齢者が家の中で過ごす時間が長くなると、いわゆる「生活不活発化」とも呼ばれる心身機能の低下を招く恐れがあると専門家は言う。

 「長期間、家の中でじっと過ごすと身体活動量が減り、結果、筋肉が衰える。また血行も悪くなるなど、さまざまなリスクがある」と話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所の北村明彦研究部長だ。

 特に下肢の筋肉が落ちやすく、やがて歩きにくさを感じたり、転倒しやすくなってしまう恐れがある。

 さらに北村さんが指摘するのは、心理面、認知機能面への影響だ。「動かないと食欲がなくなり、気力も落ちる。また人と話す機会も減ると、認知機能的にもよくない。(自粛ムードがおさまっても)以前のように外出したいと思えなくなる恐れもある」と指摘。

 「家の中でもできる限り動くようにしてほしい。また人混みを避けながら、近所の公園まで散歩するのもいいでしょう」と北村さんは話している。

 〈おうち運動で脚の筋力保つ〉

  外出自粛も、せめて自宅で運動を-。日本理学療法士協会は3月、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による生活不活発病の予防について」として、家の中で自分でできる運動の方法などを公開した。特徴はその人の足腰の状況に応じて、異なる運動を紹介している点だ。「脚上げも、立ってできない人は座ってすればいい」と同協会の大工谷新一専務理事。「要介護なのか、元気なのかでできる運動は異なる。筋肉が落ちないようにしたり、柔軟性を保つことが大事だ」と話している。

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