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「こんな歌舞伎町初めて」売り上げ10分の1の店舗も 繁華街、閑散に悲鳴

 東京都内で1日に100人を超える感染者が確認されるなど、深刻化する新型コロナウイルスの感染拡大で、小池百合子知事らが名指しで入店自粛を要請した接客を伴う飲食の場。女性従業員やスカウトを担当する男性らが感染を広げている恐れがあり、感染経路がたどりづらいことからとられた措置で、キャバクラやバーが軒を連ねる夜の繁華街から人の姿が消えている。例年ならこの時期、花見のあとや新年度でにぎわう“不夜城”に自粛ムードが漂い、補償を求める声も上がる。

 「こんな歌舞伎町は初めて見る」

 歌舞伎町で雑居ビルの前に立ち、キャバクラ店の客引きをしていた店員の女性(24)。金曜日だった3日夜の街の姿に、こうつぶやいた。

 千鳥足のサラリーマン、集団で大声を上げる若者、はしごの店を相談するグループ…。歌舞伎町では当たり前だった光景が姿を消した。ネオンもきらめいてはいるが、目をこらすと、看板の電源を落とし、休業している店も多い。

 歩いているのは家路を急ぐサラリーマンがほとんど。「人が少なすぎて声をかけてもほとんどだめ。でも店の中にいてもお客さんいないから…」と、女性は力なく笑った。

 あるスナック経営の女性は「小池知事の会見で『接客を伴う飲食店に行くのを控えて』と聞いて背筋が凍った」と振り返る。「零細のお店は自転車操業。私たちには何もできず、コロナが過ぎ去るのを待つことしかできない」とため息をつく。

 歌舞伎町に隣接し、小規模なバーや小料理店などが軒を連ねる「ゴールデン街」。人通りは少ないが、店内には、わずかながら客の姿も。マスクをし、換気のため入り口を大きく開け放つ店員の姿に営業努力がにじむ。

 マスク姿で接客していたバー経営の女性(42)は「営業しなければ私たちも生きていけない。3密(密閉、密集、密接)を避けながら営業するしかない」。常連客という男性会社員(51)は「会社では飲み会が禁止されているので長居はできないが、店がなくなったら困るし、自粛だけしていても気が詰まるから」と笑った。

 都内の繁華街はどこも似たような状況だ。銀座のクラブが並ぶ一帯も、華やかさはなく、静けさが街を支配する。

 あるクラブの女性オーナーは「2月の売り上げはいつもの3分の1、知事の会見以降は10分の1。小さいクラブはほとんど休業状態に入った」と話す。勤務する女性の数を減らして人件費を抑えても、高額な店舗の賃料は変わらない。女性は「自粛するなら、期限を決めて夜の営業を停止して、その分を補償する形にしてほしい」と要望した。

 銀座の中央通りに列をなす客待ちのタクシーにも、乗り込む人はほとんどいない。運転手の60代男性は「ドライバーは客を乗せないと給料にならない。今はどこに行っても人がおらず、出勤するだけ無駄な状態。この状態が続いたらタクシー業界そのものがしぼむことにもなりかねない」と危機感をあらわにした。

 飲食店の女性従業員に贈る生花を売る店にも、立ち寄る客の姿はない。経営者の60代女性は「『不要不急』といわれたら、この業界は何も反論できない。このままではどんどん店がつぶれる。コロナが収まっても銀座がシャッター街になったらつまらないと思うよ」と話した。

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