ヘルスケア

軽症者はホテル…都は7日開始 症状線引き・悪化の判断カギ

 新型コロナウイルスの感染拡大で大都市圏を中心に病床不足が懸念される中、軽症者や無症状者について宿泊施設や自宅などでの療養の検討を求めた厚生労働省の通知を受け、自治体が準備を本格化させている。東京都や大阪府では、ホテルを1棟単位で借り上げての受け入れを今週中に始める見通しだが、入院か療養かの症状の線引きや療養中の病状悪化への対応などの課題も指摘される。スムーズに重症者への治療優先に切り替え、「医療崩壊」を防げるか。

 1000床確保も感染者急増

 「医療現場では人手不足による負担が大変になっている」。小池百合子都知事は5日、都の配信動画でこう述べ、軽症者らに入院先の病院から、都が借り上げたホテルへ7日から順次、移ってもらうことを表明した。小池知事によると、複数のホテルなどから受け入れの打診があるという。

 新型ウイルスの感染者は約2割が本来入院が必要な重症、中等症で、残り約8割は軽症か無症状だが、現在は原則入院している。都は6日までに医療機関の病床を1千床まで確保するめどをつけたものの、4日時点で817人が入院、5日にも143人の感染者が出た。重症者の治療を優先させるため、病床に余裕を持たせるには軽症者、無症状の人を宿泊施設などでの療養に移行させることが急がれる。

 個々で異なる症状、急激な悪化…

 課題は入院か療養かの判断の在り方だ。重症化するリスクが高い高齢者や糖尿病などの持病がある人、妊婦らは対象外とし、感染を確認した医療機関の医師がその症状から判断する。

 国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫(おおまがり・のりお)国際感染症センター長は「微熱が出る程度であったり、少しせきが出て呼吸が苦しくなったりする方々は宿泊所」との見方を示す一方、症状などは個々のケースで違うことを踏まえ「線引きは大変難しい」と述べる。

 都と同様にホテルでの受け入れに向けて準備を進める大阪府の吉村洋文知事も「ケース・バイ・ケースになるのではないか」との認識を示している。

 療養中に症状が急激に悪化するリスクへの対応も重要になる。入院させるかどうか、速やかな判断が求められるからだ。新型ウイルス患者の治療に当たる大曲氏は「さっきまで話せていたのに数時間でどんどん酸素が足りなくなり、人工呼吸器をつけないと助けられない状況になる。それでも間に合わず、人工心肺をつけるということが目の前で一気に起きる」と話す。

 常駐する医師・看護師どうする

 厚生労働省の宿泊療養の指針によると、受け入れ先の宿泊施設では保健師か看護師が日中に常駐。体温などの健康状態を把握し、症状悪化の対応ができるよう搬送手段や、搬送先の医療機関の調整をあらかじめ行うとしている。

 医療関係者によると、感染予防などの豊富な知識を持つ医師、看護師の数は「都内ですら限られている」。専門性のある医療従事者が重症者ら入院患者に重点的に対応する中、地域などによっては宿泊療養で感染者の体調の変化などを見極める医療従事者の知識、経験に濃淡が出てくる可能性もはらむ。

 小池知事は3日の定例記者会見で「地区の医師会などと連携し、医療的なケア態勢も調整する」と説明。都は、自宅療養は感染者の管理が難しく、家族への感染リスクがあるとして、軽症者らの受け入れは宿泊施設に集中させる方針だ。

 西武学園医学技術専門学校東京校校長で医学博士の中原英臣氏は「宿泊施設での受け入れは、受け入れ判断や健康管理などで課題は多い。それでも、医療崩壊を防ぐために早く行う必要がある」と話した。

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