ヘルスケア

喫煙室は「3密」の典型 「たばこと健康」高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫

 4月1日から改正健康増進法が全面施行となり、屋内は基本的に禁煙になった。

 学校・児童福祉施設・病院・診療所・行政機関等は昨年7月から敷地内禁煙となった。これらの施設では、受動喫煙防止対策を施した上で屋外に喫煙場所を設置することはできるが、喫煙可能場所の標識を掲示する必要がある。

 一般のオフィスや多数の人が利用する施設、飲食店、旅客運送事業施設は原則、屋内禁煙だが、喫煙専用室あるいは加熱式たばこ専用喫煙室を設置することができる。また、4月1日現在で存在し、資本金5000万円以下で、かつ客席面積が100平方メートル以下という3条件を満たす飲食店以外は禁煙となった。喫煙可能な飲食店には、喫煙可能店の標識掲示が求められる。

 屋内喫煙室はイラスト(1)のように4種類あり、それぞれ標識掲示が必要であり、オフィスなどに設置される喫煙室では、飲食は禁止である。

 2月以降、急速に拡大してきた新型コロナウイルス感染症に関して4月7日、とうとう緊急事態宣言が発出され、テレワークの促進や不要不急の外出をしないこと、夜の繁華街への外出自粛などが呼び掛けられている。感染予防には、イラスト(2)の「密閉・密集・密接」という「3密条件」を避けることが重要とされている。

 バスや電車では窓を開けて走行する、窓の開かない車両では換気のため、従来のボタン開閉式ドアをすべての駅で自動開閉に変更するなどの対策も取られている。

 しかし、喫煙室は、まさに3密条件がそろった空間ではないであろうか。厚生労働省の「効果的な分煙対策を行うための留意事項」によると、喫煙室の設置ガイドラインとして、たばこの煙をダクト等により直接屋外に排気すること、たばこの煙が外部に漏れ出ないように喫煙室境界において室内向きに秒速0・2メートルの空気の流れを確保することが求められている。

 一方、私の試算によると、呼吸時に鼻から出る呼気の流速は普通の呼吸で秒速5メートル程度であった。この値は喫煙室入り口の気流速度とは比較にならないほど速い。さらに、くしゃみをすると、もっと高速で唾液などの飛沫(ひまつ)が飛び出すことになる。複数の喫煙者が同時に利用すると、社会的距離も取れないような狭い喫煙室は、マスクを外した利用者にとって飛沫感染の危険性は高く、喫煙室の灰皿やドアノブなどでの接触感染もリスクが高いと考えられる。

 このように、不特定者の利用する喫煙室はハイリスクであることから、閉鎖すべきであり、利用を避けるべきであると警告したい。また、喫煙により、肺や気道に炎症も起こりやすいため、喫煙者は非喫煙者に比べ呼吸器感染症の発病リスクは高いと思われる。この機会に、禁煙することを強くお勧めしたい。(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus