新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各地の自治体でも車に乗ったままPCR検査を受けられる「ドライブスルー方式」を実施する動きが出てきている。迅速で大量の検査が実施できることから、海外では韓国がいち早く導入、米国なども採用しており、国内各自治体は医療従事者の負担や感染リスクの低減などを狙っている。
今月15日からドライブスルー方式を導入している奈良県は20日、奈良市の県総合医療センター駐車場で模擬検査を実施し、診察から検体採取までの一連の流れを公開した。
窓ガラス越しに、医師が模擬患者の鼻腔へ綿棒を挿入して検体を採取、看護師は血中の酸素濃度を測定する。問診票の記入も含め検査は数分で終了。酸素濃度の数値はすぐに判明し、低ければ肺炎などが疑われるため、帰国者・接触者外来の受診が指示される。
同県では感染の疑いがある患者は11の医療機関に設置された帰国者・接触者外来で診察と検体採取を行っている。だが、医療関係者は診察のたびに感染防護具を交換する必要があり、換気や消毒も含め1人当たり1~2時間かかる。
一方、屋外でのドライブスルー方式なら手袋の交換だけで済み、1人当たり10~20分で完了する。患者が医療機関に入らないため院内感染のリスクも抑えることができる。
もっとも、誰でも検査を受けられるわけではない。検査対象は、これまで通り感染の疑いがあるとされた患者だけで、肺炎の症状などが出ている患者は室内で診察や検査をする。県中和保健所総務課の守川義信主幹は「感染リスクを減らしながら検体数を増やすことができる。医療従事者の負担軽減のためにも拡充していきたい」と話す。
鳥取県でも今月にも県中部での導入を予定している。奈良県同様、狙いは作業の効率化や院内感染防止で、検査の対象は医師らが検査が必要と判断した場合に限られている。
県中部総合事務所福祉保健局の新(あたらし)貞二局長は「検体採取が増加した際は、いかに早く検査するかが重要。職員の感染リスク軽減につなげたい」としている。
ドライブスルー方式はこのほか、新潟市ですでに実施。長崎県なども導入を表明している。