暮らし替えの道しるべ

(48)住まう人のストーリー 

 私は以前引っ越しの荷造りのお手伝いをしていたので、たくさんの部屋を見てきました。ほとんどの部屋は、その都度買い足した家具が所狭しと並び、色も形も大きさも統一感がありません。それは、住まう人の「ストーリーがない」からなのかもしれません。

 誰しも引っ越し前の空っぽの部屋を見たときは、「この部屋でこんな暮らしがしたい」と夢を描いていたでしょう。しかし、日々の暮らしを送る中で、さまざまな色や形のものが家の中に入りこみ、整理整頓ができず出しっぱなしになります。安いという理由だけで家具を買い足し、引っ越し前に想像していた部屋とはかけ離れてしまいます。

 センスのいい人は自分の好みが一貫しており、その部屋のストーリーが明確です。具体的にイメージすることで、どんな暮らしをしたいのかが明確になってきます。すると、それに必要な家具のイメージ、小物のイメージ、色や形、素材などのインテリアも明確になり、全くテイストの違う家具を選ばなくなります。

 例えば30代の新婚夫婦なら、ゆっくりと迎える休日の朝。天然木の小ぶりの北欧テーブルに明るい色のランチョンマットを敷き、その上にはきれいな色のマグカップが色違いで2つ。シンプルなブルーの皿の上にはクロワッサンにハムを挟んだブランチ-。楽しい会話がきこえてきそうです。

 5年、10年と住んでいるとそんなストーリーを忘れてしまいますが、初めて今の部屋に入ったときを思い出し、ワクワクするような部屋にしてみませんか? 

 ストレスと不安で長い時間を部屋で過ごしているこの時期だからこそ、快適な環境を整えることが心のケアにもつながるはずです。

(日本ホームステージング協会 代表理事 杉之原冨士子)

=次回は5月20日掲載予定

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