ヘルスケア

避難所3密の対策急務 複合災害を懸念、教室・旅館活用も

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、大規模な自然災害が発生し、避難所でクラスター(感染者集団)を招く「複合災害」への懸念が浮上している。昨秋、各地で台風や大雨の被害が相次ぎ、多くの被災者が身を寄せた避難所の「3密」対策が急務となり、政府は新たな対応策の検討に着手。通知を受けた自治体は対策に乗り出した。

 災害時は避難所の衛生環境が悪化する課題がある。平成23年の東日本大震災や28年の熊本地震でも発生直後に水や消毒液などは不足。手洗いや入浴は難しくなり、清掃も追いつかず、人が集中する避難所の衛生環境悪化が課題になった。

 新型コロナウイルスで感染拡大の要因とされる「換気の悪い密閉空間」「多くの人の密集する場所」「近距離での密接した会話」の3密は、避難所の状況に合致する。こうした中で、内閣府、総務省消防庁、厚生労働省は4月、避難所での感染防止策を通知した。

 具体的には指定場所以外にも可能な限り避難所を開設。学校では教室なども開放してスペースを増やす。ホテルや旅館などの協力も得て避難所増設を検討。可能な人は親戚や知人の家に避難できないか周知する。

 避難所に到着したらすぐに被災者の健康状態を確認し、感染症の疑いがあれば別スペースに待機してもらう。手洗いやマスク着用などの「せきエチケット」を徹底し、室内や物品を可能な限り清掃。避難者同士が一定の距離を保ち、換気も行うよう提言している。

 これを受け、各自治体は準備を開始した。所有施設の活用や、避難所で感染者が出た場合も含めたマニュアル作りを急ぐ。

 昨年、相次ぐ台風で甚大な被害が出た千葉市は避難所設置や運営に関するマニュアルを見直す方針だ。約98万人の人口に対し、通常確保する避難場所は約270カ所あるが、「(3密防止のため)どれくらいの避難所、スペースを確保すれば適切なのか判断が難しい」と課題を打ち明ける。

 大東文化大の中島一敏教授(感染症学)は「感染予防は3密を避け、手洗いなど衛生の『基本』を徹底することがポイントだが、緊急時の避難所では難しい場合もある」と指摘。1部屋に大勢が避難せざるを得ないケースも想定されるが、「プライバシー維持にも有効な間仕切りを活用して個別のスペースを作るなど、運用上の検討をさらに進める必要がある」と話した。

 一方、「災害に巻き込まれる危険があるのに、感染を恐れて避難しないのは本末転倒だ」と指摘するのは、防災・危機管理に詳しい防災システム研究所所長の山村武彦氏。現状の避難所の運営状況では「3密」は避けようがないため、自治体側に対し「可能な限り避難先を増やし、民間施設も活用できるよう調整を進めておくべきだと主張する。

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