こうした引き裂かれる悲しみをもつ方の悲しい、つらい気持ち。周囲の者は遺族の心の声に耳をすませる、ただ聞くこと以外にできることはありません。
悲しみの当事者は悲しみをご自身の体の一部になるほど、悲しみを味わい尽くす作業の末に悲しみとひとつになって、また悲しみを背負う以前の自分とは違う自分を生きていらっしゃいます。時に亡くした方と心の中で語り合いながら。こうしてグリーフの当事者は悲しみとともに生きながら、ひとりではなく、亡くされた方とともに生きていかれるのです。
実際のグリーフ経験者は、私が想像していたのとは異なる、輝かしいほどの生を、亡き人とともに生きていると感じています。ただ、そこに至るまでは大変時間がかかる癒やしの過程を要します。そして支えとなる聞き手、かかわり手が必要な過程なのです。
【プロフィル】おざき・ようこ
昭和46年大阪生まれ。平成8年京都府立医科大学卒。麻酔科学教室、集中治療室。16年同大博士号取得。西陣病院麻酔科勤務。25年千春会病院在宅医療部勤務。27年おかやま在宅クリニック開設。日本麻酔科学会認定専門医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医、指導医。産経新聞大阪本社地方版で連載「在宅善哉」を執筆中。著書に「それでも病院で死にますか」(セブン&アイ出版)。