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日本教育学会が提言 9月入学、効果乏しく 学校教育の強化を

 教育分野の研究者らでつくる「日本教育学会」(会長・広田照幸日本大教授)は22日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が検討している「9月入学制」について、長期化する休校で生じた学習格差の解消にはつながらないとして、教職員の増員やオンライン学習の環境整備などによる学校現場の強化を求める代替案を萩生田光一文部科学相らに提言した。

 同学会は特別委員会を設け、文科省がたたき台として提示した2案のうち、平成26年4月2日から17カ月間に生まれた児童が来年9月に一斉に新小学1年生となる案を中心に検証した。

 提言では、9月入学制の導入で1・4倍に膨れ上がる新入生の受け入れや、それに伴う待機児童の発生などの課題を分析し、「勉強の遅れを取り戻したり、個々の子供に目を配って学力の格差拡大を抑止していくような効果は期待できない」と結論づけた。

 一方でその代替案として、感染拡大の収束後も視野に、手厚いサポートができるように計10万人の教職員の増員▽通信環境を整備し、対面授業とオンライン学習を併用できる体制の構築▽低所得世帯への支援拡充▽入試の内容や時期の調整▽複数担任制の導入や拡充-などを求めた。

 こうした施策にかかる総額について、同学会は初年度に約1兆3千億円と試算。その後は、人件費など毎年約1兆円で効果的な「学びの保障」を継続できるとする。一方で、新入生や待機児童への対応など9月入学導入に伴うコストを6~7兆円程度と算出し、「有効性の小さい制度改革に使うぐらいなら、将来にわたって質の高い教育に転換するための学校づくりへの思いきった支出をしてほしい」と訴えた。

 広田氏は「学校の質の高度化を図らない限り、今まで以上の教育を提供することはできない」と話した。

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