新時代のマネー戦略

知らない会社員は損をする 税と社会保険と会社の制度 (2/2ページ)

鈴木暁子
鈴木暁子

 よくあるケースを列挙してみました。病院まで公共交通機関を利用した交通費、人間ドックで治療が必要な疾病が見つかり、治療した場合は人間ドック費用も医療費控除の対象にできることを知らない人も多いようです。また、病院に支払う食事代やインプラントの治療費など、高額療養費の対象にはなりませんが、医療費控除の対象にできるものもあるのです。領収書、レシートはしっかり保管しておきましょう。ただし、拡大解釈は危険なので、迷った場合は国税庁のホームページで確認したり、最寄りの税務署に問い合わせると安心です。

 社会保障と会社の制度でもっと節約できるかも

 会社の制度。これは自営業者にはない会社員ならではの特権です。特にリスクへの備えは国の社会保障や会社の制度を活用しても不足する分を自助努力でカバーするという考え方なので、ここはしっかり押さえましょう。

 企業内で保険に関する相談では、病気などで働けなくなった場合の補償、医療や死亡時の保障の大きさなどが多いのですが、会社員が加入している健康保険には、病気やけがで働けなくなった場合に一定額を給付してくれる「傷病手当金」があります。これは自営業者が加入する国民健康保険にはない給付です。

 また、「高額療養費制度(1カ月の医療費が自己負担額上限を超えた場合、超えた分については払い戻してもらえる制度)」に加え、会社独自の付加給付があるとか、従業員の死亡時に会社からの弔慰金や遺族年金を設定しているところもあります。社会保障を理解するだけでなく、ぜひ会社の規程も一度確認してほしいとアドバイスしています。

 それ以外にも、世帯主は夫でも、妻のほうが所得が高い場合あるいは妻の会社のほうが福利厚生が手厚い場合、 子どもは妻の扶養にするほうがオトクになるケースもあることなど、調べたりちょっとした工夫で所得控除を増やせることもあります。

 

 会社に任せ切りでは損をしかねない

 自営業者は自身で確定申告をするので、税や社会保険に非常に敏感です。一方、会社員は年末調整があるので、このような計算や税の精算まで会社がやってくれます。会社任せは楽な反面、鈍感になってしまいがち。ガラス張りといわれる会社員の所得でも、少しでも節税、節約につなげられる賢い納税者になっていただきたいです。

鈴木暁子(すずき・あきこ)
鈴木暁子(すずき・あきこ) ファイナンシャル・プランナー CFP(R)認定者
FPオフィスNext Yourself 代表
多様化するライフスタイルに応じた生活設計や資産形成を重要視し、セミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・ウェブなどで記事・コラムを執筆。家計管理や資産形成相談を多数手がける。シニアマネー相談も得意とし、リタイアメントプラン、セカンドライフの生活設計アドバイス、高齢期の住み替え支援も行う。共著に「100歳まで安心して暮らす生活設計」(実業之日本社)がある。FPで構成する「高齢期のお金を考える会」のメンバー。

【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら

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