「家族の幸せ」で比較する遺産配分5つのパターン
夫が死亡 妻と子供、遺産は自宅と金融資産
1:法定相続分通りに相続
・良い点
相続争いが起こりにくい
・心配な点
自宅の売却に共有者全員の合意と手続きが必要
2:妻が全財産を相続
・良い点
妻の生活が安定。一次相続で相続税がゼロ
・心配な点
子供が一切、財産を取得できない。二次相続も踏まえると、必ずしも得ではないケースも
3:子供が全財産を相続
・良い点
二次相続も踏まえると、有利になることも少なくない
・心配な点
妻が一切、財産を得られず、生活や居住に支障も
4:妻が自宅と当面の生活費を相続
・良い点
妻が自宅で暮らせる。子供も金融資産を相続、相続争いが起こりにくい
・心配な点
将来的に妻の生活費が足りなくなる可能性がある
5:妻が「配偶者居住権」を取得
・良い点
妻は自宅で暮らせる。子供も自宅の所有権を取得できる
・心配な点
子供は居住権を持つ母親の合意なしに自宅を売れない
新しい相続の形「家族信託」 元気なうちに財産管理や処分を託す
最近、「新しい相続の形」として注目されているのが「家族信託」(民事信託)だ。
元気なうちに息子や娘など信頼できる家族に財産の管理や処分を託す。
「テレビでも取り上げられ、電話の問い合わせが相当ある」(司法書士の野谷邦宏さん)という。
「生前・死後事務委任」は主に、家族のいない人や家族に負担をかけたくない人に適している。生前に判断能力が不十分になったとき、財産管理や運用を家族や信頼できる第三者に委ねる「成年後見制度」(任意後見制度)もある。
家族信託では、父親が長男に「遺産はお母さんの生活費に使ってほしい。お母さんが亡くなったらおまえが預かり、おまえの死後に孫が受け取れるようにしてほしい」といった具体的な指定ができる。
長男が同意したら、口約束ではなく、書面で「信託契約」均等を結ぶ。財産を任せる父親が「委託者」、任せられる長男が「受託者」、利益を受ける長男の母親と子供が「受益者」となる。
このほか、(1)委託者が認知症になったときの財産の運用方法を指定する(2)障害を持つ子供の生活費として遺産を管理してもらう(3)「土地を何代も引き継いで」など、遺言ではできない将来の運用を指定する-といった活用法がある。
このほか、公的に提出する書類や複雑な手続きがなく、大きな費用がかからないこともメリットだ。
それだけに、内容をしっかりと詰め、署名・捺印(なついん)した信託契約書は公正証書として残すなど、将来の家族トラブルを避ける配慮も大切だ。
野谷さんは「家族の状況次第で家族信託、任意後見制度、遺言、あるいはそれらの組み合わせなど、多様な選択肢がある。ぜひ専門家に相談してほしい」と話す。(『終活読本ソナエ』2020年新春号から随時掲載)
【プロフィル】司法書士・野谷邦宏氏
1973年、神奈川県生まれ。行政書士、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続士、遺品整理士でもある。資産管理会社勤務を経て、2000年から活動開始。司法書士法人リーガルサービス代表。一般社団法人しあわせほうむネットワーク代表。著書に「まるわかり!もしもの時の手続き・相続 完全ガイド」(クロスメディア・パブリッシング)。