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過疎地でも移住者の収入安定 「地域づくり組合」制度スタート

 人口減少や高齢化で担い手不足に悩む過疎地域と、都市の移住希望者を結びつける新たな制度の法律が4日施行された。総務省の「特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)」制度。地域の事業者が集まってつくる組合が移住者らを雇用し、さまざまな仕事に派遣する仕組みで、地域にとっては人口増が、移住者らには安定した収入が保証されるメリットがある。新型コロナウイルス感染症で「低密度」な農山漁村が再評価される中、地方創生の切り札として注目される。

 複数の仕事で安定

 「島で通年雇用できる事業者は少ないが、観光業やナマコの出荷など、季節ごとの仕事は絶えずある」。組合設立の準備を進める島根県隠岐諸島・海士(あま)町の濱中香理・人づくり特命担当課長(43)は期待を寄せる。「組合による雇用で事業者も移住者も助かる」

 地域で設立した組合が雇用者1人当たり年間400万円程度の給与を支払えるよう、国と市町村が運営費を4分の1ずつ助成。残る2分の1は、人材派遣を受けた事業者が支払う料金で賄う仕組みだ。春から秋は農業法人や宿泊施設、冬は除雪やスキー場といった働き方が想定されている。

 「結い」が派遣労働に

 新法は昨年11月、議員立法で成立した。成立前日の参院総務委では、反対する共産党の山下芳生副委員長が「地域づくり人材の雇用形態を、なぜ派遣労働にする必要があるのか」と質問した。

 議員立法を主導した自民党の細田博之元幹事長(衆院島根1区)は、立法の精神について、わが国古来の互助の仕組みである「結いの思想なんです」と語り、こう続けた。

 「組合が農業者や介護に人を出す以上は、派遣法の法体系で考えることも大事だとなり、派遣労働に関する法制度が(今回の法律に)いっぱい書かれるようになってしまった」

 その結果、協同組合の互助の精神をうたいつつ、実務上は労働者派遣法の高度な専門性が求められることに。組合自体が人材派遣を行うことが前提のため、派遣会社へ委託することは認められない。

 総務省地域振興室の岩田真奈課長補佐は「市町村には派遣法に精通した上、働く人の希望と地域の需要をマッチングする力量も必要になる」と説明。市町村からは「委託できないなら、せめて助言はもらえないか」との相談が寄せられているという。

 協力隊の定住にも

 それでも、都市の移住希望者にとって、安定した給与と健保や年金といった社会保険が完備される画期的な制度には違いない。例えば従来の制度に同じ総務省の「地域おこし協力隊」があるが、任期は3年だ。

 岩田さんは「任期を終えて定住したくても仕事がない隊員も利用できる。市町村には『創意工夫で、さまざまな活用が可能です』と説明している」と話す。

 総務省は今年度、全国で80組合に助成できる5億円の予算を確保。新制度の利用を呼びかけている。

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