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営業再開の近大マグロ 映画「TUNAガール」が描く完全養殖成功の研究秘話 (2/2ページ)

波溝康三

 劇場長編監督としてのデビュー作は、2006年に公開された「幸福のスイッチ」。田舎町で電器店を営む父(沢田研二)と娘(上野樹里)の物語だ。和歌山県田辺市の電器店を舞台に展開するオリジナル脚本のストーリーには、自身の会社員時代の経験が生かされていた。パナソニックでは販促部などに所属。電器店のサポート事業の一環で、地方の電器店に応援に出たことがあるという。

 そこで、企業人として体験した知識は、映画監督となってからも血肉となっている。 

 「高齢者の多い田舎町では、切れた電球を取り替えたり、重いマッサージチェアを移動させるためだけに顧客の家を回ったり…。ただ、家電の商品を売ることだけが、電器店の仕事ではないことを身をもって知りました」

 そんな家電店主を演じた沢田研二や上野樹里が奮闘する姿には、メーカー勤務時代の安田監督自身の姿が投影され、描かれていたのだ。

 水産大国・日本が世界に誇る技術を知らせたい

 「TUNAガール」は、現在、ひかりTVやネットフリックスなどで配信中だ。

 32年の苦労の末に完全養殖の技術を確立し育てた、この“近大マグロ”が味わえる料理店は、東京・銀座や大阪・梅田にオープンした当初、予約の取れない人気ぶりで話題をさらった。

 いずれの店舗も、新型コロナウイルスの影響で一時休業し、自粛していたが、6月1日から営業を再開した。

 「映画を見て“こんなに苦労して育てたマグロなのか”と、実感しながら味わってほしいですね。絶対、より、ありがたく、おいしく感じるはずですから」と安田監督は笑いながら、こんな期待を込めて語った。 

 「環境問題が世界で注目される中、完全養殖は天然の資源を傷つけることのない、日本が誇る技術だと、この映画で、世界へ伝えることができれば」

波溝康三(なみみぞ・こうぞう) ライター
 大阪府堺市出身。大学卒業後、日本IBMを経て新聞記者に。専門分野は映画、放送、文芸、漫画、アニメなどメディア全般。2018年からフリーランスの記者として複数メディアに記事を寄稿している。

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